民主主義の問題点とこれから

こんにちは。文系大学院生のandrewjacovsです。最近少し忙しくて更新がかなり滞ってしまいました。今回は2回目の政治系の記事です。前回はフェミニズムについて論じましたが、今回はもう少し幅を広げて民主主義について論じていきたいと思います。今回民主主義について語りたいと思ったのは、アメリカ大統領選挙が実施されている今、民主主義をもう一度見つめ直すのによいタイミングだと思ったからです。

 

民主主義は、現代の多くの国で採用されており、なおかつ好意的にとらえられることの多い政治システムです。一方で、民主主義の崩壊が叫ばれ、20世紀最悪の時代の一つである1930年代へ接近していると指摘されるなど、民主主義は現代では問題となっていることも事実です。民主主義に対して私達はどのように考えるべきなのでしょうか。

 

民主主義を良く表わしている金言として、まず以下のチャーチルの発言から始めたいと思います。

 

It has been said that democracy is the worst form of government except all the others that have been tried.

(訳:民主主義は最悪の政府の形だと言われてきた。もっともそれはこれまで試されてきた他の形を除いて、であるが。)

 

裏返せば、この発言は民主主義が既存のシステムの中では最良のシステムだということを述べています。なぜかといえば、それが絶対的な正しさや幸福や利益に近づく最良の方法だからです。私達の認識能力は非常に限られています。私達は未来のことを全く知ることができません。政権が実行する施策が、本当によい未来を提供するのか、私達は判断することはできません。しかしながら、私達は現段階で未来を予測することはできます。私達は絶対的に正しい政策など選択することはできません。しかし、おそらく正しいと考える政策を、実現することはできます。しかし、その際の正しいという予測は個人的なものであればあるほど、誤りやすくなります。また、個人にとってのよい未来が、多くの人にとっては悪い未来なのかもしれません。だから、個人の予測に従って政策を履行することは多くのリスクを伴います。ここで、民主主義の持つ大きな利点が明瞭になります。民主主義をとり、多くの人の意見を募ることで、私達は予測の正確性を高めることができます。また、多くの人にとってよい未来の実現に向け、進むことができるようになります。

 

しかしながら、このような民主主義の性質は多くの問題点を抱えています。それは、2016年のアメリカ大統領選挙において顕著になった問題です。すなわち、民主主義では多数派に媚びることで勝利を手に入れることができるという点です。民主主義の中心的な原理は「多数決の原理」です。民主主義においては、多数決の原理により、正確性を高め、多くの民意をすくいとることが可能です。一方で、選挙においては、マイノリティを相手にせず、マジョリティに媚びることで、勝利という目的は原理上実現可能です。ドナルド・トランプが当選したという事実がこのことを裏付けます。あるいは、ヒトラー政権の誕生を考えてもよいと思います。この点から分かるように、独裁制と民主主義は決して対立しているわけではありません。民主主義により正当化を受けることで、独裁制は誕生します。両者の間には避けがたい連続性があります。史上最悪の独裁政権の一つであるドイツ第三帝国が、当時最も民主的な仕方で政権運営を行っていたワイマール共和国から誕生したという事実は示唆的です。

 

このような分析に対しては、私達に光を照らしてくれるような、一つの指摘が存在します。それは、私達の判断は完全に自分や自分たちの属する共同体の利益のみを考えているわけではない、という指摘です。端的に言えば、良心という光がそこにはあります。多くのマジョリティは、マイノリティを排斥するような政治家の発言に、直感的に嫌悪感を持ちます。たとえ自分たちが利益を得たり、不利益が生じないとしても、マイノリティを排斥する発言を多くのマジョリティは許しません。

ここで重要なのは、このような非常に攻撃的な発言や政策と、そうではない発言や政策の違いです。例えば以下の二人の政治家の政策を見てみましょう。

 

政治家A:経済政策①をとろう

政治家B:経済政策②をとろう

 

この二人においては、どちらを支持することも問題なく思えます。むしろ、政治家Aと政治家Bを支持する人が双方いるということが健全な民主主義であるようにさえ思えます。しかし、政治家Cが以下のような発言をしたとしましょう。

 

政治家C:民族①を排斥しよう

 

一般的に、このような発言は決して許されるものではない、たとえ否決されるとしても、この政治家Cを支持する人はやばい、おかしい人だ、と思うわけです。要するに、私達は政治家Aや政治家Bの政策は考慮に値するものであるけれど、政治家Cの政策は、考慮に値しないものだ、と考えているわけです。これが良心の光です。たとえ、民族①の排斥が、民族②にとって実質的に利益になったとしても、理性的な民族②の人物はこの政治家Cを支持することはないと、私達は考えます。私達は良心の光に照らして、利益や快楽、幸福に基づき政策を選択することに先立って、その政策が「真正」なものかどうか、議論の土俵にのせてよいものかどうか、を判定しているのです。この良心の光は、民主主義の先述の問題点を解決してくれるのでしょうか。

私は、正直に言えばそうでないと思っていることを白状しなければなりません。最大の問題は、真正なものかどうか、は誰が決定するのか、ということです。私達はpost-truthの時代に生きています。「真理」は信じられない時代です。「真正」は読んで字のごとく、「真に正しい」という意味です。しかし、「真理」が消えてしまった今、「真に」「真の」といった、「真理」を副詞的・形容詞的に用いている語も消えていることになります。「真正」は手に入らないはずです。さらに言えば「真理」を獲得することができないのが民主主義の正当化の前提だったはずです。「真理」に近づくための民主主義が「真理」を前提することは許されないはずです。このように考えるなら、政治家Aや政治家Bの政策と、政治家Cの政策を区分していた「真正性」という基準は消失することになります。

 

この基準の消失に対抗する措置は、「真正性」は本物ではなく、私達の直感によるものなのだ、という路線をとることです。つまり、政治家Aや政治家Bの政策と、政治家Cの政策を区分するのは、私達の直感によるのだ、という主張をとることです。この路線は非常に妥当であり、受け入れやすいものですが、一方で民主主義の正当性を著しく弱める路線だということも理解しなければなりません。私達が判断において用いる「真正性」の基準はあくまで直感にしか与えられないということは、民主主義がもたらす結果が、私達の直感に大きく左右されるということです。しかし、私達の直感は狂いえます。「狂う」というと正確ではないかもしれません。「狂う」という言い方には「正常な」状態があることを意味するからです。より適切に述べるならば、私達が明らかに求めていないような帰結をもたらすような主義や政策を、正しいものとして選択してしまうような、そういう直感が存在しうる、ということです。先述したヒトラー政権の誕生はまさにこのことの最たる例にも思われます。

 

民主主義は私達の限られた認識能力の中で真理と幸福を求める手段です。しかし、その選択や判断のプロセスには「正しさ」を持ちだすことはかなりの困難があります。ということは、反対に述べれば、私達の判断や選択に付着しているのは直感に他ならないということです。このことを私達は認めなければいけません。私達が民主主義に対してこれからとるべき態度の一つ目は、まさにこのことを認めることです。十全な信仰は十全な疑いの上でこそ成り立つものです。キリスト教の真の信仰者は聖書を盲目的に信ずるものではなく、聖書に疑いをかけながら、それでも積極性を持って聖書を信じるような人物です。もっと言えば、明日キリスト教を信じることができるかわからないと日々思い、戦々恐々としながらも、それでも聖書の矛盾や問題点を探し、解決する姿勢を失わない人間です。民主主義を信じるためには、民主主義の持つこの問題点を自覚し、その解決を常に考えることが必要です。

私達がすべき二つ目のことは、民主主義に代わるシステムを常に探すことです。先述したチャーチルの発言は、裏を返せば、民主主義が既存のシステムの中で民主主義が最善である、ということを示しています。しかし、チャーチルがこのような語り方をしなかったということが肝要です。要するに、チャーチルは民主主義のよさを述べ立てるのではなく、信じられている民主主義は欠陥だらけである、ということを強調しています。民主主義は手段であって、目的ではありません。民主主義を守ることが目的化した社会は非常に危険です。現状民主主義が最良であると認めることと、民主主義を超えるシステムがあると信じることには、何の矛盾もありません。この態度を失ってしまった場合、私達は民主主義を自明の理、絶対的な体系とみなすことになり、私達の心は離れているのにもかかわらず、民主主義という制度だけが残存することになります。これはまさに衆愚政治そのものです。衆愚政治の誕生は、民主主義の崩壊によって生まれるのではなく、形式的な民主主義への信仰によって、婚外子としてではなく、正当な子供として誕生すると認めることは、その母たる民主主義を操る私達の責任なのです。

 

※この文章で用いられている「直感」の意味は一般的な意味よりも広いと思います。例えば、過去の政策の成否に訴えかけて、政策を選択するような場合も、直感による選択の1ケースです。

※多くのマジョリティは、マイノリティを排斥する発言を許さない、という良心についての記述がありましたが、必ずしもそうではないことは認めなければなりません。一方で、このような場合があるということは、その後の私の主張を強めるものでもあります。譲歩節の中の反例は主張の一部としてカウントできるからです。

 

Dinosaur. Jr(ダイナソーJr) 紹介&好きなアルバムランキング

どうも、文系大学院生のandrewjacovsです。前回は政治の記事でしたが、今回はふたたび音楽の話題に戻ろうと思います。今回はDinosaur. Jrの紹介と好きなアルバムランキングをやります。

Dinosaur. Jrは80年代後半から90年代後半にかけて活躍したオルタナグランジバンドです。ポスト・ハードコアの終焉期からオルタナ黎明期に活躍をしたバンドの一つです。Dinosaur. Jrは様々なポスト・ハードコアのバンドから影響を受けており、特にBlack FlagとHüsker Düからは強い影響を受けています。影響を与えたバンドとしてはSonic YouthNirvanaといった、オルタナ初期のバンドが上がります。1997年に一度解散しますが、2007年に復活し、以後創作やライブなど精力的に活動を行っています。以下、Dinosaur. Jrのメンバー紹介です。

【Dinosaur. Jrメンバー】

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https://rockinon.com/news/detail/73680 より画像引用

写真左より紹介していきます!

J. Mascis(Joseph Donald Mascis)(Vo, Gt.)

けだるい声が特徴的なギターヴォーカル。他のグランジバンドと比べ叫ぶ機会は圧倒的に少なく、高い声を出すこともあまりない。たまに裏声を使って高い声を出しているが、かなり厳しいようでカスカスの小さな声。だがそれがよい。ギタープレイは非常に独特なスタイルを持っており、ヴォーカリストとしてよりもはるかに評価されている(それはRolling Stone誌が選ぶベスト・ギタリストTOP100にランクインしていることからもわかる)。ビッグマフを利かせてジャズマスをひずませまくる。他オルタナアーティストと同様、それほど複雑なギタープレイをするわけではないが、ギターソロのときは別人のように切れのある速弾きを見せることもある。難しいことができないギタリスト、というよりも難しさ以外の点に非常に価値を置いているギタリストに思える。

Lou Barlow(Ba,Vo.)

ノリを意識したベースプレイが特徴的なベーシスト。非常にうまい。ベースコードを弾くことも多く、中音域を沢山使うため存在感はかなり大きい。また、Jと共に歌うこともあり、歌も非常にうまくコーラスも得意。かなり激しい弾き方をするがリズムのずれはなく、曲に疾走感を持たせるプレイが特徴的。3rdアルバム後脱退し、Sebadohを結成しギターヴォーカルを務める。SebadohはPavementと並び90年代ローファインディーの雄となった。2007年の再結成時にDinosaur. Jrに復帰。

Murph(Dr.)

特徴があるわけではないが安定感のあるドラマー。JとLouが自由にそれぞれのギタープレイとベースプレイを実行することを可能にしているのはMurphの安定したドラミングだと思う。5thアルバム後脱退し、一時はLemonheadsに参加。2007年の再結成時にDinosaur. Jrに復帰。

 

【音楽的特徴】 

Dinosaur. Jrは他のグランジオルタナアーティスト同様ひずんだギターと単純なギタープレイが特徴的であるが、他のグランジオルタナアーティストとは異なる特徴を持っている。まず一つ目は、使っているコード。Dinosaur. Jrの曲で使われているコードはフォークのコードであることが多かったりする。そのため、アコースティックギターで弾いても全く違和感のないメロディーを持っている。そのためSoundgardenAlice in Chainsのようなメタル感は非常に薄い。ひずみだけではなくメロディーでも勝負できる点は素晴らしい点であり、この時期のグランジオルタナ勢の中ではかなりポップなのが特徴的である。どちらかというとパワーポップに近い感じさえ受ける。しかしながら、パワーポップの持つ明るさのようなものがDinosaur. Jrにあるかといえばそれも違う。ポップさはあるが暗い。内省的であるが美しい。それがDinosaur. Jrの持つ魅力である。彼らが奏でる音は80年代後半のポスト・ハードコア的な音である。Hüsker Düのようなある種破壊的な音である。しかしその中にポップセンスがあるという意味で、他のポスト・ハードコアバンドとも異なるのである。

二つ目はヴォーカルのJの歌い方であろう。何というか、Jの歌い方には気力がない。気合が入っていないとでもいうべきだろうか。カート・コバーンのような絶叫を聴くことはできない。グランジアーティストやポスト・ハードコア勢の多くが持つのはむき出しの怒りであり、叫びである。しかしながら、Dinosaur. JrのJのヴォーカルではそういったむき出しの感情を感じることはほとんどない。むしろ、そこにあるのは諦めの感情にも聴こえる。生の疲れといってもよいかもしれない。それをポップなメロディーに乗せて歌うという行為は我々の生活そのものなのかもしれないとすら思えてくる。いくらあきらめて、歩を止めたいと思っても、後ろ向きに生きていくことは許されない。

 

【好きなアルバムランキング】

ここからは好きなアルバムランキングである。Dinosaur. Jrの作品は以下の三つの時期に分けることができる。

①インディー期

1st~3rdまで。インディーズ時代の音源群である。この時期はややポスト・ハードコア的な要素が強く、曲も2,3分台の短いものが多い。

②メジャー期

4th~7thまで。メジャー移籍後の音源群である。オルタナグランジ的要素が増し、長尺の曲も増えた。ポップセンスはやや後退し、歌詞も内省的なものが増えた。Jが積極的に裏声を用いるようになったのもこの時期。

③再結成期

8th~11thまで。再結成後の音源群である。ポップさが一気に増し、明るい楽曲が増えた。ややパワーポップ感が別時期に比べ強いように思える。

ここでは、①と②の時期の全7作品をランキングします!

〈1位〉Bug(1988)

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https://www.discogs.com/ja/Dinosaur-Jr-Bug/release/674285 より引用

1. Freak Scene(3:37)

2. No Bones(3:43)

3. They Always come(4:37)

4. Yeah We Know(5:24)

5. Let It Ride(3:37)

6. Pond Song(2:54)

7. Budge(2:33)

8. The Post(3:38)

9. Don't(5:42)

10. Keep the Glove(2:51)

※赤字はおすすめ曲

3rdアルバム。つまり、インディー期最後のアルバムです。このアルバムを持ってLouが脱退します。1st、2nd同様ポスト・ハードコア由来のひずみを持った音を保ちつつ、ポップセンスを洗練させた作品。非常に聴きやすい曲が多く、初めてDinosaur. Jrを聴く人にも勧められる一作。駄曲がなく、10曲ツルッと聞ける点もよい。特に1曲目の"Freak Scene"はさわやかさの中にひずみと内観的手法が見え隠れする超名曲。また、9曲目の"Don't"はレコーディング中に予定よりも1曲足りないことに気づき、一発録りでその場で適当に録った曲らしい。この曲は「叫び」を前面に押し出した曲であり、かなりハードコア感の強い楽曲。10曲目の"Keep the Glove"はカントリー調の曲で彼らなりのギャグなのだと思う。どのアルバムも好きで非常に順位付けが難しかったですが、ポスト・ハードコア的な音とポップなメロディーという二大特徴のバランスが最も良い作品に聴こえたので、一位にしました。

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〈2位〉You're Living All Over Me(1987)

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https://www.amazon.co.jp/Youre-Living-All-Over-Analog/dp/B005FQNISA より画像引用

1. Little Fury Things(3:07)

2. Kracked(2:51)

3. Sludgefeast(5:17)

4. The Lung(3:51)

5. Raisans(3:50)

6. Tarpit(4:36)

7. In a Jar(3:28)

8. Lose(3:11)

9. Poledo(5:43)

10. Just Like Heaven(2:53)

※赤字はおすすめ曲

2ndアルバム。3rdアルバムの"Bug"を紹介したが、"Bug"に比べてこの作品の方がよりポスト・ハードコア感が強く、ノイズもひずみも大きい。メロディーがポップではない曲も多く、80年代感がかなり強いアルバム。最初このアルバムから私は聴きましたが、まったくわからなかった。というよりアクが強すぎて苦手だった。ただ他のアルバムを聴いた後に本作を聴くと、これが一番Dinosaur. Jrらしいアルバムなのでは、と思えてくる作品。若干シューゲイザー感もあるかも。1曲目の"Little Fury Things"は本当に素晴らしい楽曲で、80年代の音楽のすべてを3分間に詰め込んだような印象さえ受ける。ハードコア的な叫び、ポスト・ハードコア的なノイズとシューゲイザー的なノイズ、フォーク調のメロディ、オルタナ的歌唱。全ての人に聴いてほしい名曲である。4曲目の"The Lung"は疾走感が光る名曲。そして10曲目の"Just Like Heaven"はポストパンクの雄、The Cureのカヴァー。再解釈が非常にうまくできており、メロディーを殺さずにオルタナ感を強めることに成功している。The CureのRobert Smithもこのカヴァーをとても気に入っていたらしい。

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〈3位〉Where You Been(1993)

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https://www.amazon.co.jp/Where-You-Been-Dinosaur-Jr/dp/B000002MH5 より画像引用

1. Out There(5:54)

2. Start Choppin'(5:40)

3. What Else Is New?(5:10)

4. On the Way(3:30)

5. Not the Same(6:02)

6. Get Me(5:52)

7. Drawerings(4:51)

8. Hide(4:14)

9. Goin' Home(4:19)

10. I Ain't Savin'(2:30)

※赤字はおすすめ曲

5thアルバム。メジャー移籍後2作品目。このアルバム後にMurphが脱退し、Dinosaur. Jrは実質的にJのソロ活動になります。今までの作品との違いは切迫感かと。非常に切迫感があり、狭くて暗い部屋に閉じ込められたかのような楽曲が連続します。また、Jが積極的に裏声を用いるようになったのはこの作品からだと思います。ギターソロも増え、いわゆる「泣き」のギターを沢山聞かせてくれるのも新たな魅力です。この「泣き」のギターの路線を活動を停止する前にこのあと二作品にわたり追求する、という感じですね。1曲目の"Out There"は「泣き」のギターと切迫感が際立つ名曲。この曲のイントロだけでもこのアルバムは買う価値があると思いますね。このアルバム以降の三作品は非常に内省的で、グランジオルタナ感が強い。結構暗いアルバムであるうえに、キラーチューンが他のアルバムと比べて少ない気がする。おすすめ曲はどれも最高なんだけど、それ以外の曲の印象がやや薄い。それでも、転換点となった価値のあるアルバムだと思います。Dinosaur. Jrのアイコンともいえるキモカワジャケットのうちの一つでもあります。いいね。

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〈4位〉Without a Sound(1994)

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https://www.amazon.co.jp/Without-Sound-Dinosaur-Jr/dp/B000002MTC より画像引用

1. Feel the Pain(4:20)

2. I Don't Think So(3:37)

3. Yeah, Right(2:47)

4. Outta Hand(5:00)

5. Grab It(3:33)

6. Even You(3:23)

7. Mind Glow(4:04)

8. Get Out of Thins(5:23)

9. On the Brink(3:14)

10. Seemed Like the Things to Do(5:49)

11. Over Your Shoulder(4:53)

※赤字はおすすめ曲

6thアルバム。メジャー移籍後3作品目。前述の通り、前作制作後にドラムのMurphが脱退。そのため、このアルバムは実質J一人で作ったものです。1994年というグランジ黄金期に制作したこともあり、たしか売り上げ的には最も売れたアルバム。一人になったJの悲しさ、哀愁があふれ出るアルバム。インディーズ時代とは異なり、ポップさというより「泣き」のギターというべきギタープレイを見せている。ひずみとノイズはやや減退し、ソフトなオルタナ的な楽曲が多い。バラードに良い曲が多い。それでも1曲目の"Feel the Pain"や2曲目の"I Don't Think So"といった、今までのDinosaur. Jrらしい楽曲も含まれている。質は高いアルバムではあるが、後半は似た楽曲が多く、正直飽きる側面もなくはない。それでも、「悲しみ」が最も現れた力作だと思う。このキモカワジャケットもいいですね。

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〈5位〉Hand It Over(1997)

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https://www.amazon.co.jp/Hand-Over-Dinosaur-Jr/dp/B000024GGC より画像引用

1. I Don't Think(3:23)

2. Never Bought It(3:43)

3. Nothin's Goin On(3:14)

4. I'm Insane(3:53)

5. Can't We Move This(3:42)

6. Alone(8:02)

7. Sure Not Over You(4:10)

8. Loaded(3:27)

9. Mick(4:39)

10. I Know Yer Insane(3:04)

11. Gettin Rough(2:13)

12. Gotta Know(4:48)

※赤字はおすすめ曲

7thアルバム。このアルバム後、Dinosaur. JrはJの判断でいったん活動を停止します。1997年という、グランジ・ムーブメントの終焉期に出されたことも災いし、評価はあまり得ることができず、セールス的にもイマイチだったようです。ただ、J本人はとても気にいっているようで、実際いい作品だと私も思います。ギタリストとしてのJはこの時が全盛期だと思いますね。非常に指もよく動くし、メロディーもよい。何かがのりうつったかのような「泣き」のギタープレイは健在です。あとは、裏声の使用頻度がものすごく増えた点が大きな特徴ですかね。ここは好みがわかれると思います。私としては嫌いではないですが元のけだるい感じの方が好きですね。ギターやベース、ドラム以外の楽器を沢山使っている点も特徴で、Jの作曲能力の高さを示したアルバムだとも思います。この路線の作品もっと聴きたかったなあ、と思わせてくれるアルバムです。ただ、"I'm Insane"や"Gettin Rough"といった曲名から察するに、メンタル限界だったんでしょうね。こちらのキモカワジャケットも愛おしい。

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〈6位〉Green Mind(1991)

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https://www.amazon.co.jp/Green-Mind-Dinosaur-Jr/dp/B000002LO1 より画像引用

1. The Wagon(4:55)

2. Puke and Cry(4:28)

3. Blowing It(2:45)

4. I Live for That Look(1:56)

5. Flying Cloud(2:35)

6. How'd You Pin That One On Me(4:24)

7. Water(5:38)

8. Muck(4:16)

9. Thumb(5:39)

10. Green Mind(4:57)

※赤字はおすすめ曲

メジャー1作目の4thアルバム。パール・ジャムの1st、Nirvanaの2ndが発売されたのもこの年であり、グランジオルタナムーブメントの始まりにDinosaur. Jrもメジャーデビューをした、というわけです。世間一般からは最も評価が高いアルバムで、はじめてDinosaur. Jrを聴く人にお勧め。全体的にノイズやひずみは控えめで、異常なほどさわやかな楽曲が続く。夏にドライブしながら聞くアルバムって感じ。決して質は低くはないのだが、ポスト・ハードコア感、泣きのギターといった特徴が失われてしまっており、Jのギタープレイも割と型にはまった分かりやすいものになっている。おしゃれオルタナって感じ。決して悪くはないが私がDinosaur. Jrに求めていたものとは大きく異なったアルバム。クールすぎるとジャケが話題になったらしい。たしかにクールだが、Dinosaur. Jrっぽくないといえばぽくない。キモカワジャケットの方が彼らの特徴を上手くアイコンとして提示していると思いますね。1曲目の"The Wagon"と10曲目の"Green Mind"はそんな中でもDinosaur. Jr節を利かせた良曲だと思う。

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〈7位〉Dinosaur. Jr(1985)

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https://www.amazon.co.jp/Dinosaur-Jr/dp/B0007NMKAI より画像引用


1. Bulbs of Passion(4:16)

2. Forget the Swan(5:09)

3. Cats In a Bowl(3:36)

4. The Leper(4:05)

5. Does It Float(3:19)

6. Pointless(2:47)

7. Repulsion(3:05)

8. Gargoyle(2:11)

9. Severed Lips(4:03)

10. Mountain Man(3:29)

11. Quest(4:28)

12. Does It Float (Live)(3:54)

※赤字はおすすめ曲

記念すべき1stアルバム。特徴であるノイズとひずみ、けだるい歌い方といった特徴が早くも表れているのがすごいですね。Louのベースの音も1stとは思えないほどいいです。それでも上位に入らないのは、単純に曲の質があまり高いとは思えないからです。もっと言えば、この段階で指針や挑戦したい内容はかなり定まっている印象を受けるものの、それを曲のよさに反映できていないように思える。音楽の持つ実験性に曲の質が負けている感じがしてしまうアルバムですね。それでも、聴きどころはたくさん。まず本意気でポスト・ハードコアをやっているアルバムはこれしかないという点。Sonic YouthNirvanaよりも、Black FlagFugaziに近いものを感じる。ギターのノイズという意味では一番かもしれない。彼らのルーツ、目標を知る上では一番良いアルバムということもできるかもしれません。曲の質も高くないといったが、9曲目の"Severed Lips"はその後の彼らの活躍を保証するような、これ以降のDinosaur. Jrの持つ特徴を凝縮したような一曲だと思います。2曲目の"Forget the Swan"はBlankey Jet Cityっぽいギターから幕を開け、90年代の彼らの特徴でもある切迫感を早くも感じる良曲である。

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以上で7作品のランク付け&レビュー終わりました!まとめると以下の通りですね。

 

1位 Bug(1988)

2位 You're Living All Over Me(1987)

3位 Where You Been(1993)

4位 Without a Sound(1994)

5位 Hand It Over(1997)

6位 Green Mind(1991)

7位 Dinosaur. Jr(1985)

 

はじめて聴く人には"Bug"か"Green Mind"をお勧めしておきます!

ちなみに、J本人がアルバムを気に入っている順にランク

付けしてます。以下の通り。

 

1位 You're Living All Over Me(1987)

2位 Hand It Over(1997)

3位 Where You Been(1993)

4位 Dinosaur. Jr(1985)

5位 Green Mind(1991)

6位 Without a Sound(1994)

7位 Bug(1988)

 

何でだよって感じですね。私とJは趣味が合わないみたい。1位~3位は納得できなくもないけど。ちなみに、再結成後の4作品も含めてJはランク付けしてますね。この4作品も含んだランキングは以下のリンクから見れます。

amass.jp

ではでは!ぜひ聴いてみてください!

フェミニズムの問題点~なぜフェミニズムは嫌われてしまうのか~

こんにちは。文系大学院生のandrewjacovsです。今までは音楽や映画の評論をしてきましたが、政治についても論じていきたいと思ってます。今回はテーマをフェミニズムにしました。

私は以前からフェミニズムの思想、具体的には男女平等を目指す姿勢に非常に共感してきました。その意味では私もフェミニストなのだと思ってます。しかしながら一方で、いわゆる「フェミニスト」たちの言説によくわからない不快感を持っていたこともまた事実です。そして、これがあくまで個人的な感情ならいいのですが、日本全体の中でアンチ・フェミニスト的な考えが広まっているように思えたので、この不快感はある程度普遍性を持った感情なのだと思いました。これが今回フェミニズムを論じたいと思ったきっかけです。

なぜ「フェミニズム」は嫌われてしまうのか。男女平等を目指すことに対して、反対意見を持っている人は以前よりも確実に減っています。明らかに、男女平等が良いということはほとんどの人に共有された価値観ですし、実際表向きの法律の面では、差異はほとんどありません。それなのに、「フェミニズム」は嫌われます。なぜでしょうか。崇高な共有された信念をフェミニズムが説得的に供給できていれば、このような事態は起きないはずです。そこには、フェミニズムが抱えるなんらかの問題があるはずです。

フェミニスト」の主張は、女は不当に差別されてきており、男に抑圧されてきた存在であり、そしてそれは男が悪い、というもののように見えます。この主張の前半部分を否定することはまったく正当性を持たないことです。たまにこの部分を否定する人がいますが、その人は非常に明確な差別主義者です。歴史的に男が女を抑圧してきたことは疑いようがないですし、女への人権意識は著しく欠如していました。

しかしながら、この主張の後半部分、すなわち「男が悪い」という点は明らかに重要なポイントを見おとすものです。たしかに男は悪いです。しかしそれと同じくらい女も悪いのです。フェミニスト」たちのこのような主張は非常に単純でわかりやすいものです。だから、問題意識を持っている人に響きやすい。それゆえ、運動を広げていくためにはこのような言説を流布することは極めて有効です。ですが、これは「フェミニスト」たちの悪しき甘えです。フェミニスト」たちの「男が悪い」という主張が持つ構造は、ある悪しき事象の裏には、糸を引いている人物がいる、というものです。今回であれば糸を引いているのは男だ、というわけです。しかし、もし裏で意図を引いているのが男であるなら、これほど簡単な問題はありません。明確に差別主義的な男に説得を試み、応じなければ社会的に排除すれば良いからです。

フェミニスト」たちが見落としているのは以下の点です。つまり、差別を根源的に産んでいるのは悪意を持った人物ではなく、まさにこの世界の体制なのだ、ということです。私は先程表向きの法律に差異はなく、男女平等の価値は共有されていると述べました。それなのに差別がある、ということが非常に肝要な点です。つまり、明確な差別主義者がいないとしても、差別は起こるということです。差別を生むのは黒幕的な他者ではありません。それはこの社会と世界を包む体制なのです。

体制とは何か。それは私たちそれから馴致されるものであり、また私たちが作るものでもあります。私たちが社会から得た価値観を、私たちは無意識的に反復しています。私たちは制度からある価値を受け取り、その価値を再生産していきます。体制に作られ、体制を作る存在が人間です。

これまでの差別についての研究では、被差別者が差別者に転じてしまうことが注目されてきました。日本人から差別されているフィリピン人が、バングラデシュ人を差別する、というのはまさにこのモデルです。つまり、被害者が加害者になりうる、ということです。しかしながら、この逆の論点もあるのです。つまりは加害者もある意味では被害者である、ということです。私たちは体制に縛られた存在である、という意味で被害者です。しかしながら、体制の維持に加担しているという点では加害者です。男は不当な価値観を再生産していますが、不当な価値観を植え付けられてもいます。女は不当な価値観を押し付けられますが、不当な価値観の維持に貢献してしまっています。男も女も加害者であり、また被害者でもあります。

そして不幸なことは、この価値観をめぐる一連のプロセスは無意識に行われているという点です。だから、ほとんどの人は明確な差別主義者ではないのに、この社会では差別が残るのです。

フェミニスト」たちは、男たちは豊かな人生を享受しているという幻想を幸か不幸か持っています。「フェミニスト」たちは女たちは飼い慣らされた犬のようだと言います。男に尻尾をふり、男の機嫌を取ることで生きていくしかない存在であると。これはある意味では正しいですが、重要な点を見落としています。それは男も犬だということです。「フェミニスト」たちのいう豊かな人生などありません。フェミニスト」たちは、女は人間らしい生を送る必要があると言います。しかし、この時点で人間らしい生があることを前提しているのです。しかしそんなものはどこにもありません男は女を飼い慣らしているかもしれません。しかしながら男はある意味で飼い慣らさせられているという側面があります。一方で、女が男に飼い慣らしを強制させている面もあります。

このような「ねじれ」構造は具体例がたくさんあります。ミスコンと女子アナの結びつき、男が奢る文化、育休の取得率の差異。こうしたものは男と女が生み出した産物でもある一方で、男と女が押し付けられた価値観でもあります。

そして、「フェミニスト」たちの主張はまた社会に不幸な価値観を植え付けようとしています。フェミニスト」たちは単純でわかりやすい、非常に誤った見解を流布することで自分たちの感情を理論的に正当化しようとしています。しかしながら、幸か不幸か、多くの人はこのような見解は明らかに誤りを含んでいることにも気付いています。このことから「フェミニスト」は感情的で、議論を行うことができない人、というイメージが間違いなくできています。ここから、女は感情的で馬鹿げたことしか言えないのだ、という遥かに誤った見解が社会の中で生産されていきます。そしてこの誤った価値観は、体制の中で維持され次の世代に受け継がれていくことになるでしょう。そしてこの価値観がまた次の世代を縛るのです。フェミニスト」たちの仕事は全く逆効果です。フェミニストたちが最初にすべきだったのは、こうした「フェミニスト」をしっかりと手を切り、自分たちは問題の本質を見極めていると主張することでした。しかし、運動の拡大に目が眩んでしまったのです。そして今や、フェミニズムはその本来の意味を失い、「フェミニズム」にとって変わられつつあります。感情的でわかりやすい言説が、本質的で理性的な言説からその単語を奪い取ってしまったのです。フェミニズムは死滅しました。残ったのは「フェミニズム」です。そしてこれは今や、社会においてある種の「差別主義者」と同じ意味しか持たなくなってしまいました。フェミニズムの崇高な理念はこのような差別主義から手を切るべきだったのです。悪貨が良貨を駆逐してしまったのです。それゆえ、フェミニズムの中心部分は問題がないどころか崇高な理念に基づいていたのに、フェミニズム全体が問題だ、とみなされるに至ったのです。

※「フェミニズム」「フェミニスト」といった鍵括弧付きの用語は鍵括弧なしの同語と全く異なる意味を持っている点には留意をお願いします。

【ガレージロック・リバイバル、ポストパンク・リバイバル名盤アルバム16枚紹介】

どうも。文系大学院生のandrewjacovsです。今回はガレージロック・リバイバル・ポストパンク・リバイバルの私が思う名盤を紹介していきます。そもそもガレージロック・リバイバル、ポストパンク・リバイバルとは何かというと、2000年代に起こった音楽のムーブメントの一つです。具体的に言えば、60年代・70年代のロックンロール、もしくは80年代のポストパンクの復興運動です。1990年代はグランジオルタナの時代でした。この90年代に対する反動として巻き上がったのが、ガレージロック・リバイバル、ポストパンク・リバイバルです。両者は基本的に同じ運動を指しているといってかまいませんが、バンドによってリバイバルを試みている時代が異なるように思える点が面白いところです。ガレージロック・リバイバル、ポストパンク・リバイバルの具体的な特徴は

・楽器に対するミニマリズム・・・・・・非常に少ない種類の楽器のみを用いる

・メロディーに対するミニマリズム・・・単純なリフやコードの使用。

・原点回帰ともいうべきファッション・・革ジャンやスーツといった黎明期の服装

といったところでしょうか。私自身、大学2年や3年生のときにリバイバルにとてもハマったので、思い出を整理する意味でも、名盤を紹介していきたい!

 

【名盤紹介】

 〈1〉Is This It(2001)- The Strokes

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https://www.amazon.co.jp/This-STROKES/dp/B00005NEUF より画像引用

1. Is This It(2:31)

2. The Modern Age(3:28)

3. Soma(2:34)

4. Barely Legal(3:55)

5. Someday(3:04)

6. Alone Together(3:09)

7. Last Nite(3:14)

8. Hard to Explain(3:44)

9. New York City Cops(3:31)

10. When It Started(2:55)

11. Trying Your Luck3:23)

12. Take It or Leave It(3:16)

※赤字はおすすめ曲

リバイバル・ムーブメント初期の一枚。The Strokesの1stアルバム。全曲おすすめにしたいほど大好きな曲しかない。00年代であるが、現在の世界の状況を踏まえて歌っている感じがする。非常に刹那的で生き急いだ楽曲、という感じ。世界には多くの金持ちがいて、人々の生活の水準も上がり、便利になったけれど、やはり我々の人生には何かが足りない。我々の人生には何かが足りないと考えてしまうほど多くすぎる時間が与えられているが、何かを人生でなすには少なすぎる時間しか与えられていない。そういった思いを20そこそこの若者たちがメロディーで語っている(気がする)。

音楽的な特徴としては、音域の使い方が非常にうまく、音域のすみわけができている。ギター2本とベース、ドラムとヴォーカル。どれも大きすぎる音ではないのに、すべての楽器の音が分かれてしっかりと響いてくる。アルバートハモンド・ジュニアのポップセンスあふれるギターリフの上にジュリアン・カサブランカスのしゃがれた特徴的な声が重なる。聴きやすいギターのリフが多く、曲のテンポもよい。3分程度の楽曲が並んでいるため、アルバム全体もよいテンポ。

彼らはニューヨーク出身の若者である。ロックンロールはイギリスのものであったが、実はリバイバルアメリカから始まったというのが面白い点でもある。
 

 

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〈2〉Elephant(2003)- The White Stripes

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https://www.amazon.co.jp/Elephant-White-Stripes/dp/B001AP11L6 より画像引用

1. Seven Nation Army(3:52)

2. Black Math(3:04)

3. There's No Home for You Here(3:44)

4. I Just Dont Know What to Do With Myself(2:46)

5. In the Cold, Cold Night(2:58)

6. I Want to Be the Boy to Warm Your Mother's Heart(3:21)

7. You've Got Her In Your Pocket(3:40)

8. Ball and Biscuit(7:19)

9. The Hardest Button to Button(3:32)

10. Little Acorns(4:09)

11. Hypnotize(1:48)

12. The Air Near My Fingers(3:40)

13. Girl, You Have No Faith In Medicine(3:18)

14. Well It's True That We Love One Another(2:43)

※赤字はおすすめ曲

こちらもアメリカのロックバンドThe White Stripesです。デトロイト出身で、デルタ・ブルースをルーツにしています。デルタ・ブルースとはブルースの中で特に少人数でわかりやすいジャンルのことらしいです。このThe White Stripesのすごい点はバンドメンバーが2人しかいないところ。ギター・ヴォーカルのジャック・ホワイトとドラムのメグ・ホワイトの二人だけです。ジャック・ホワイトはベースの音域も使えるので、非常に低い、独特な音をギターで出すことがあり、そこもまた面白いです。半ば無理やり出している音もありますね。ドラムのメグ・ホワイトはジャック・ホワイトからドラムを習っており、決してうまいとは言えないドラマーです。多分そこら辺の大学生の方が上手い。でも、The White Stripesのタイム感を引き出しているのは間違いなくメグですね。デイヴ・グロールも彼女のことを絶賛してました。走りまくるあのドラムが何とも言えない味を出してますね。で、実はこの二人は元夫婦であることが分かっています。兄妹という設定でやっていたのですが、二人の離婚届がネットにアップされてました。

The White Stripesのアルバムはどれも素晴らしいもので大好きですが、このアルバムが一番一般的に評価が高いのでこのアルバムを紹介しました。彼らの4thアルバムです。冒頭の"Seven Nation Army"はサッカーの試合でよく使われてますね。5曲目の"In the Cold, Cold Night"は珍しくメグ・ホワイトが歌っている曲です。長短織り交ぜた楽曲が続きます。やはり特徴はジャック・ホワイトの声。素晴らしい。彼にしか出せないハイトーン・ヴォイスですね。上手い下手とかではかれる次元ではないです。ジャケ写もかっこいい。

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〈3〉De Stijl(2000)- The White Stripes

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https://www.amazon.co.jp/Stijl-White-Stripes/dp/B001APFIQK より画像引用

1. You're Pretty Good Looking (For a Girl)(1:51)

2. Hello Operator(2:36)

3. Little Bird(3:07)

4. Apple Blossom(2:13)

5. I'm Bound to Pack It Up(3:10)

6. Death Letter(4:30)

7. Sister, Do You Know My Name?(2:52)

8. Truth Doesn't Make a Noise(3:15)

9. A Boy's Best Friend(4:22)

10. Let's Build a Home(1:58)

11. Jumble, Jumble(1:54)

12. Why Can't You Be Nicer to Me?(3:22)

13. Your Southern Can Is Mine(2:32)

※赤字はおすすめ曲

このアルバム紹介しようか迷ったんですよね。一般的にはThe White Stripesは3~6枚目がいずれも評価が高いんですけど、この2ndアルバムが私は好きなんですよね。リバイバル名盤紹介、といっているから一般的に評価が高いのをメインにしようと思ったんですけど、それでも私が記事を書く以上、私自身が思う名盤でいいのかな、という気がしてきたので、まあいいや!って感じで紹介します。ちなみにThe White Stripesは黒と白と赤でジャケットやライブの衣装が構成されています。このアルバムも例に漏れずです。

私がこのアルバムが好きな理由は、これが一番哀愁が表現されているアルバムだからです。勢いやノリのよさ以外の、ソングライティング能力をジャック・ホワイトが持っていることを証明しているアルバムですね。"Apple Blossom"のメロディーが持つやるせなさは絶品ですし、"Death Letter"で、信じられない暗い気持ちをあえてポップなメロディーに乗せて歌っているあたりもかっこいいですね。リバイバルという意味でも、一番70年代の雰囲気を良く表わしている気がしますね。反対に言えばオリジナリティは少ないかもだけど。

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〈4〉Whatever People Say I Am, That's What I'm Not(2006)- Arctic Monkeys

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https://www.amazon.co.jp/Whatever-People-Say-Thats-What/dp/B00U5OOQJM より画像引用

1. The View from the Afternoon(3:38)

2. I Bet You Look Good on the Dancefloor(2:54)

3. Fake Tales of San Francisco(2:58)

4. Dancing Shoes(2:21)

5. You Probably Couldn't See for the Lights but You Were Staring Straight At Me(2:11)

6. Still Take You Home(2:54)

7. Riot Van(2:15)

8. Red Light Indicates Doors Are Secured(2:24)

9. Mardy Bum(2:55)

10. Perhaps Vampires Is a Bit Strong But...(4:29)

11. When the Sun Goes Down(3:20)

12. From the Ritz to the Rubble(3:13)

13. A Certain Romance(5:31)

※赤字はおすすめ曲

今まで見てきた2つのバンドは「第一世代」ともいうべき、リバイバル・ムーブメントの火付け役ですが、このArctic Monkeysは「第二世代」のようなものですね。アメリカでの盛り上がりがイギリスに伝播した結果、登場したバンドですね。本人たちもThe Strokesにあこがれてバンドを始めたといっていました。これはArctic Monkeysの1stアルバムですが、平均年齢19歳で作ったアルバムです。このアルバムがイギリス中で話題になり、バカ売れしました(たしかダブルミリオンくらい売れてたはず)。世相的にもオアシスがもうほぼ終わりに近づいていて、次の若手アーティストをイギリスが求めていたらしいですね。

ヨレヨレのTシャツを着たさえないやつらが、これだけ痛快で乗れてポップな曲を弾きまくるというのは、最高ですね。しかも、イケていないことを半ば誇りに思ってそうなところがよい。2曲目の"I Bet You Look Good on the Dancefloor"なんて、普通に考えたらおかしいわけですよ。イケてる奴ならダンスフロアに行って、女と出会うわけです。なのに、この曲では「ダンスフロアだったら君はイケてるに違いないよ」とか歌うわけです。だから、自分がダンスフロアに行ったことないけど、精一杯の強がりで、自分の日常生活で出会う女に「ダンスフロアならイケてるよ」と玄人ぶっていうわけです。雑魚感満載で最高ですね。

音楽的には、1曲が非常に短い。今までの2バンドに比べても短いですね。物足りなさを感じることもありますが、展開がスピーディーで飽きないといえば飽きない。

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〈5〉AM(2013)- Arctic Monkeys

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https://www.amazon.co.jp/AM-Arctic-Monkeys/dp/B00DKY4LBW より画像引用

1. Do I Wanna Know?(4:31)

2. R U Mine?(3:22)

3. One for the Road(3:26)

4. Arabella(3:27)

5. I Want It All(3:04)

6. No. 1 Party Anthem(4:03)

7. Mad Sounds(3:35)

8. Fireside(3:01)

9. Why'd You Only Call Me When You're High?(2:41)

10. Snap Out of It(3:13)

11. Knee Socks(4:18)

12. I Wanna Be Yours(3:04)

※赤字はおすすめ曲

Arctic Monkeysの5枚目のアルバム。Arctic Monkeysは非常に変化の速いバンドで、1枚目で売れた後、ソッコーで路線を変えて色々出しました。2枚目は比較的良く、3、4枚目はやや微妙かな、という感じですかね。そんな中、この5枚目のアルバムはArctic Monkeys史上もっともよいアルバムです。ただ、難点は、もはやこれはリバイバルではないということ。だから、ここで紹介するのはホントは間違ってるんでしょうけど、まあ許して。Arctic Monkeysリバイバル出身だからセーフってことで。年代的にもこれは2013年の作品で完全にリバイバルは終わってますね。ローファイでもなく、かなりハイファイです。でも、彼らの特徴のかっちょいい、人を引き付けるリフは超健在だし、むしろパワーアップしてる。そして、特によくなったのは音ですね。音域が1stや2ndに比べて意図的に開けられてますね。その結果、音一つ一つに緊迫感があり、静けさの中でリフがカッチョよく鳴り響く、という構図になってます。高い声のコーラスも効果的ですね。1曲目の"Do I Wanna Know?"や2曲目の"R U Mine?"の高い声コーラスは素晴らしい。あと、リフのよさで言えば10曲目の"Snap Out of It"と11曲目の"Knee Socks"が特にいいと思います。

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〈6〉Franz Ferdinand(2004)- Franz Ferdinand

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https://www.amazon.co.jp/Franz-Ferdinand/dp/B0001ZMWQO より画像引用

1.  Jacqueline(3:49)

2. Tell Her Tonight(2:18)

3. Take Me Out(3:57)

4. The Dark of the Matinee(4:03)

5. Auf Achse(4:20)

6. Cheating On You(2:37)

7. This Fire(4:15)

8. Darts of Pleasure(3:00)

9. Michael(3:21)

10. Come On Home(3:46)

11. 40 Ft(3:24)

※赤字はおすすめ曲

続いてはこれもまた「第二世代」と呼ばれるべきバンドである、フランツ・フェルディナンドです。スコットランド出身のバンドでこのアルバムが1stアルバムです。

実は、私はフランツ・フェルディナンドは苦手なんですよね。赤字が少ないのはそのためです。それでも、リバイバルとしてはやはり外せないアーティストなので、紹介しないわけにはいきませんね。他のリバイバルと違って、ディスコ感が強くて、踊る音楽って感じです。本人たちも「見た目が悪い自分たちが女を踊らせたかった」といってるし、自覚的にやっていると思いますね。これは80年代のリバイバルと考えていいと思います。なので、ある意味ポストパンク・リバイバルとしては正当なアーティストです。バカっぽいけど踊れて楽しい音楽です。

研究室の先輩はダダイズム的なバンドだといってましたね。たしかに韻の踏み方とかを見ると、ダダイズム的なのかもしれません。

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〈7〉Up the Bracket(2002)- The Libertines

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https://www.amazon.co.jp/Up-Bracket-%E8%BC%B8%E5%85%A5%E7%9B%A4CD-RTRADECD065-LIBERTINES/dp/B000XFZSXG より画像引用

1. Vertigo(2:39)

2. Death On the Stairs(3:24)

3. Horror Show(2:35)

4. Time for Heroes(2:40)

5. Boys In the Band(3:42)

6. Radio America(3:45)

7. Up the Bracket(2:39)

8. Tell the King(3:24)

9. The Boy Looked at Johnny(2:38)

10. Begging(3:20)

12. The Good Old Days(3:00)

13. I Get Along(2:53)

※赤字はおすすめ曲

 続いては、ロンドンのリバイバルバンド、The Libertinesの1stアルバムです!The Libertinesの特徴は、他のリバイバル勢に比べて、インディー感が強い点ですかね。演奏も非常のローファイで、若干雑なところがあります。そのせいか、60年代リバイバルな感じがしますね。The StrokesArctic Monkeysに比べて、洗練されていない、もっと前の時代を意識している気がします。ロックの原初の衝動といってもいいかもしれません。ヴォーカルが二人いて、一曲の中で交互に歌ったりするのも楽しさの一つです。

ポップなメロディーの中に哀愁を漂わせるのが上手いバンドですね。2曲目の"Death On the Stairs"や4曲目の"Time for Heroes"はそのよさが際立った楽曲ですね。あとは、コーラスがきれいじゃなくていい。非常に粗雑なコーラスなので、整理されていない複数の声が聞こえてくるのが、インディー感をかきたててくれます。ジャンルは違いますがPavementみたいなコーラスです。7曲目の"Up the Bracket"や9曲目の"The Boy Looked at Johnny"はまさにそのコーラスが効いている曲です。

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〈8〉Highly Evolved(2002)- The Vines

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https://www.amazon.co.jp/Highly-Evolved-Vines/dp/B0000669JG より画像引用

1. Highly Evolved(1:34)

2. Autumn Shade(2:18)

3. Outtathaway(3:03)

4. Shunshinin(2:44)

5. Homesick(4:53)

6. Get Free(2:07)

7. Country Yard(3:46)

8. Factory(3:12)

9. In the Jungle(4:16)

10. Mary Jane(5:52)

11. Ain't No Room(3:29)

12. 19696:28)

※赤字はおすすめ曲

 続いてはオーストラリアのリバイバルバンドのThe Vinesの1stアルバムです。今までアメリカ、イギリスと紹介してきましたが、オーストラリアにもいるんです。彼らも「第二世代」と呼ぶべきバンドで、非常に若いですね。たしかこのアルバムを出した時は高校生だったはずです。The Vinesを表するときによく言われるのは、「The BeatlesNirvanaを足して2で割ったバンド」というものです。60年代の雰囲気を持ちながらも、90年代に強く影響を受けている点が非常にリバイバルの中では特徴的です。ギターの音もリバイバルの音というよりはむしろ、90年代のオルタナグランジの音に近い気がします。ヴォーカルのクレイグ・ニコルズの歌い方もポップというよりはハードコア的な「叫び」の要素を含んだものだと思います。その意味で、リバイバルに含めていいのかどうかは微妙なところだと個人的には思っていますが、一般的にはリバイバルに含まれるので紹介しました。

個人的にリバイバルに含まれる理由は独特の60年代感があるからだと思いますね。もっとちゃんと言うなら、60年代サイケからの影響があるように見えます。ガレージロックを直接的にリバイバルしているわけではないので、The Strokesとかと違いが出るのだと思います。そのサイケからの影響が、なんとも言われぬ60年代感として響いてくるのでしょう。

リバイバルの中では、ポップセンスよりも、生の怒りの声が響いてくるという点が特異なところですね。むき出しの感情をひずんだ音に載せてぶつけてくる、それが基本的なThe Vinesの魅力です。一方で6曲目の"Country Yard"のような美しいバラードを披露する側面も持ち合わせています。

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〈9〉Veni Vidi Vicious(2000)- The Hives

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https://www.amazon.co.jp/Veni-Vidi-Vicious-Hives/dp/B000066F6H より画像引用

1. The Hives - Declare Guerre Nucleaire(1:36)

2. Die, All Right!(2:46)

3. A Get Together to Tear It Apart(1:53)

4. Main Offender(2:33)

5. Outsmarted(2:22)

6. Hate to Say I Told You So(3:21)

7. The Hives - Introduce the Metric System in Time(2:06)

8. Find Another Girl(3:12)

9. Statecontrol(1:55)

10. Inspection Wise 1999(1:38)

11. Knock Knock(2:10)

12. Supply and Demand(2:27)

※赤字はおすすめ曲

続いては、スウェーデンリバイバルバンド、The Hivesの2ndアルバムです。これは本当リバイバルを語る上で欠かせない一枚ですね。年代から見て分かるように、彼らはまごうことなき「第一世代」です。The StrokesThe White Stripesが火付け役として注目されがちですが、スウェーデンにも早くからリバイバルをやってた人たちがいたんですね~。

このアルバムの特徴は、とにかくリフのゴリ押し。リフとノリで突っ切る。リフのキャッチ―さとフックの効き方はホントすごいですね。おそらくこれは彼らの出自に影響していると思います。The Hivesは1stアルバムを聴くと分かるように、もともとメロコアバンドだったんですね。だから、ドラムどこどこどこーっていうリズムに合うキャッチ―なリフを作ることになれていた。だからこそのリフへの自信だと思います。そんな中、ひときわ目立つのが8曲目の"Find Another Girl"ですね。キャッチ―な勢い爆発のリフではなく、南国感のあるゆるーいギターのフレーズを基調とした曲です。サザンロックていうのかな。ハワイのビーチで聞きたい曲です。

演奏も非常にうまい。音源とライブで質が変わらない。ダサい職人たちが奏でる、自身を持ったポップミュージック、それがThe Hivesですね。ヴォーカルのハウリン・ペレ・アームクヴィストの歌い方はミック・ジャガーを意識しているらしいですね。相当特徴ある歌い方です。

 

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〈10〉Tyrannosaurus Hives(2004)- The Hives

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https://www.amazon.co.jp/Tyrannosaurus-Hives/dp/B0002C9G7E より画像引用

1. Abra Cadaver(1:34)

2. Two-Timing Touch and Broken Bones(2:01)

3. Walk Idiot Walk(3:32)

4. No Pun Intended(2:21)

5. A Little More For Little You(2:59)

6. B is for Brutus(2:36)

7. See Through Head(2:22)

8. Diabolic Scheme(3:00)

9. Missing Link(1:56)

10. Love In Plaster(3:11)

11. Dead Quote Olympics(1:59)

12. Antidote(2:30)

※赤字はおすすめ曲

こちらもThe Hivesのアルバムです。大傑作の2ndの後、メジャーデビューを果たした3rdアルバムがこれです。前作同様、キャッチーなリフが作品を貫いていますが、本作の特徴は「オモチャ」のようなチープな音作りですね。アホっぽい、細かい電子的な音が作品を包んでいます。思い切った路線ですが、これがThe Hivesのリフとよくマッチして、オリジナリティを生んでいると思います。

曲の展開が急激に変わる曲もあり、聴いてて飽きないように工夫されていますね。特に5曲目の"A Little More For Little You"や6曲目の"B is for Brutus"は面白い展開を持つ曲です。

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〈11〉Bring 'Em In(2002)- Mando Diao

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https://www.discogs.com/ja/Mando-Diao-Bring-Em-In/release/2394423 より画像引用

1. Sheepdog(3:35)

2. Sweet Ride(2:04)

3. Motown Blood(2:03)

4. Mr. Moon(3:30)

5. The Band(3:16)

6. To China with Love(5:02)

7. Paralyzed(4:08)

8. P. U. S. A(2:38)

9. Little Boy Jr(2:55)

10. Lady (2:32)

11. Bring 'Em In(2:13)

12. Lauren's Cathedral(4:02)

※赤字はおすすめ曲 

こちらもスウェーデンリバイバルバンド、Mando Diaoです。このアルバムは1stアルバムです。グスタフ・ノリアンとビヨルン・ディクスクウォットという二人の作曲家が曲を出し合い、切磋琢磨することで完成した快作です。二人とも自分が作曲した曲は自分が歌う、という感じですね。

Mando Diaoの魅力は、メロディーが非常にポップでノリがいいところ(これ何回もいろなバンドで書いてる気がする)。ダンスホールで踊る音楽って感じですが、Franz Ferdinandが80年代のダンスホールなら、Mando Diaoは60年代のダンスホールって感じですね。どちらかというとガレージやR&Bからの影響が大きいように思われます。グスタフとビヨルンはビートルズからすごく影響を受けたとも公言していて、彼らの優れたポップセンスはここからきているのかもしれません。このアルバムは本当にどの曲をシングルカットしてもバカ売れ間違いなし、というくらいシンプルでノリのいい曲が続きます。二人とも歌い方が非常に艶っぽく、叫ぶところは叫んでいて勢いもあります。とにかく最高だから一度聞いてほしい。

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〈12〉Leave Me Alone(2016)- HINDS

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https://www.amazon.co.jp/Leave-Me-Alone-inch-Analog/dp/B01 より画像引用

1. Garden(4:08)

2. Fat Calmed Kiddos(3:03)

3. Warts(2:36)

4. Easy(2:25)

5. Castigadas En El Granero(3:47)

6. Solar Gap(2:25)

7. Chili Town(3:17)

8. Bamboo(3:50)

9. San Diego(2:31)

10. And I Will Send Your Flowers Back(3:34)

11. I'll Be Your Man(3:18)

12. Walking Home(3:12)

13. Trippy Gum(4:33)

14. When It Comes To You(2:51)

 ※赤字はおすすめ曲

ここからは若干番外編ですね。普通はリバイバルにくくられないけれど、リバイバルとみなしてもいいのでは?と勝手に思っているバンドの名盤を紹介していきます。このアルバムはスペインのガールズバンドHINDSの1stアルバムです。イギリスやアメリカ、北欧で多かったリバイバルバンドですが、スペインにもこれほど素晴らしいアーティストがいるんですね~。HINDSはもはやポップスに近いかもしれませんが、それでも二人のヴォーカル、カルロッタ・コシアナスとアナ・ガルシア・ペローテ、の歌い方がロックだと感じさせてくれます。非常にパンチの効いたしゃがれた声を持っていて、非常にカッコよい。ポップセンスとロックはやはり対立しないのだ、ということを実感させてくれます。

また、生き方も非常に注目されているようで、周りの目や価値観にとらわれず、自由に生きているということが評価されているようですね。たしかにファッションも攻めていてかっこいいし。何よりスペインという場所はポピュラーポップミュージシャンが多い地域で、ロックはあまり栄えていないところなので、その中で古き良きガレージを体現している点は斬新さもあり、非常に面白い存在ですね。

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〈13〉Songs of Innocence & Experience(2019)- DYGL

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https://www.amazon.co.jp/Songs-Innocence-Experience-DYGL/dp/B07R47PZZH より画像引用

1. Hard To Love(2:46)

2. A Paper Dream(3:24)

3. Spit It Out(3:34)

4. An Ordinary Love(5:31)

5. Only You (An Empty Room)(4:57)

6. Bad Kicks(2:29)

7. Don't You Wanna Dance In This Heaven?(5:25)

8. As She Knows(4:21)

9. Nashville(5:27)

10. Behind the Sun(4:44)

※赤字はおすすめ曲

いよいよ来ました。日本のバンドであるDYGLです。DYGLの音楽性は非常に多岐にわたっていて、ジャンルでくくることはなかなかできませんが、本作はリバイバルといって差し支えないでしょう。2019年とかなり最近のアルバムですが、これは紛れもなくリバイバルの香りがするアルバムです。面白いのが、The Strokesの1stやArctic Monkeysの1stのような、リバイバルど真ん中名盤よりも、The Strokesの5thアルバムや6thアルバム、Arctic Monkeysの5thといった、リバイバル税の最近のアルバム、に非常に似たものを感じる点です。その意味で、「新時代のリバイバル」といってもよいかもしれません。ヴォーカルへのエフェクトのかけ方や、インディーロックへの接近といったってんが、具体的な要素だと思いますが。ちなみに、このアルバムをプロデュースしたのはThe StrokesのギタリストであるAlbert  Hammond, Jrだということ。だからThe Strokesっぽさがあるんですね。

あとびっくりするのは、ヴォーカルの秋山信樹の英語のうまさですね。英語でDYGLは歌いますが、これはスコットランド訛りらしいです。自分で練習して、スコットランドの訛りを身に着けたそう。聴いてみればわかりますが驚きです。

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〈14〉50回転ズのギャー‼(2006)- ザ50回転ズ

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https://www.amazon.co.jp/50%E5%9B%9E%E8%BB%A2%E3%82%BA%E3%81%AE%E3%82%AE%E3%83%A3%E3%83%BC-%E3%82%B650%E5%9B%9E%E8%BB%A2%E3%82%BA/dp/B000CBNX4C より画像引用

1. 50回転ズのテーマ(2:07)

2. マブイあの娘(2:02)

3. Thank You For Ramones(1:36)

4. ぬけがらロック(3:30)

5. The Ballad Of Iron Eyes Cody(The Mummies Cover)(2:07)

6. たばこの唄(1:52)

7. お前のせいだぜ(2:29)

8. 天王寺エレジー(3:42)

9. 少年院のソナタ(1:41)

10. Kojikinotaisho(2:17)

11. 夢ならいいのに(2:37)

12. Ataigawaruinosa(4:34)

13. Saturday Night(BAY CITY ROLLERS Cover)(2:22)

※赤字はおすすめ曲

こちらも日本は大阪のロックバンド、ザ50回転ズです。彼らも一般的にリバイバルにはあまりくくられませんが、紹介したいのでします。だって悔しいんだもん。演奏力も高くて曲もよいのにあんまり知られてない。彼らはガレージロックとパンクからの影響がとても大きいです。今まで紹介してきたバンドはあまりパンクからの影響がないと思いますが、このザ50回転ズは非常に大きな影響を受けていますし、実際このアルバムはかなりパンク色の強いアルバムです。そのことは3曲目の"Thank You For Ramones"という曲名からもわかるでしょう。

ただ、パンク一色というわけではなく、非常に緩急のあるアルバムだと思います。曲の長さも短い曲と4、5分ある長めの曲がありますし、何より日本人にしかありえない音楽性があるのが特徴です。演歌や歌謡曲に非常をとても好んでおり、演歌や歌謡曲のエッセンスを含んだ曲が随所に配置されています。4曲目の「ぬけがらロック」や8曲目の「天王寺エレジー」がそういった楽曲です。また、12曲目の"Ataigawaruinosa"ではしっとりしたバラードを歌い上げており、多彩な側面を見せてくれています。勢いで突っ走っているようなバンドに思われがちですが、このアルバムの構成力、配置のバランスはもっと評価されていいと思っています。

カヴァーが2曲あるのも、ロックへの愛とリスペクトが明示的に表れていていいですね。特に13曲目の"Saturday Night"はまさに「土曜の夜!」って感じの素晴らしいカヴァーで本物を聴いたとき逆にがっかりしました。

彼らは非常に歌詞も面白く、見た目もトリッキーなのでコミックバンドと思われがちですが、そうではないと思います。むしろ「まじめにふざけている」とリスペクトを込めて言いたいバンドですね。高い演奏力と息の合ったアンサンブル、そしてソングライティングのセンスと音楽史の深い理解。そういったものが交錯してできた大傑作アルバムだと思います。

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〈15〉Faust C.D.(2008)- 毛皮のマリーズ

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https://www.amazon.co.jp/Faust-C-D-%E6%AF%9B%E7%9A%AE%E3%81%AE%E3%83%9E%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BA/dp/B0015RA8R2 より引用

1. おはようミカ(4:35)

2. 人生(2:38)

3. ハートブレイクマン(2:16)

4. 非・生産的人間(1:51)

5. ジャーニー(4:51)

6. ライデイン(愛と笑いのロード)(2:59)

※赤字はおすすめ曲

こちらも日本のバンド、毛皮のマリーズです。毛皮のマリーズは解散してしまいましたが、非常に質の高い作品を出し続けた素晴らしいバンドで、その活動は多岐にわたってきました。ヴォーカルの志磨遼平は非常に音楽に詳しく、ロックンロール愛好家と自称しており、その豊富な知識を生かして、様々なバンドのオマージュをアルバムごとに行ってきました。このアルバムは2ndアルバムとほぼ同時期に出されたミニアルバムで、最もガレージロック感が強いように思ったので、選出させてもらいました。

このアルバムは音がいいですね。音がいい、というのは音質がいいという意味ではなく、むしろ逆で、非常にガシャガシャとした粗い音が魅力的、という意味です。あとは、ヴォーカルの志磨遼平の声が非常に特徴的で面白いです。彼は現在ドレスコーズという名前でソロ・プロジェクトを実行していますが、この時のようなガレージ感の強い曲が一番彼の声にマッチしていると思います(あくまで個人の見解です)。

加えて、「やさしさ」を感じられるのが一番いい点ですね。粗さの中、辛さの中にある「やさしさ」、そういった雰囲気が初期の毛皮のマリーズにはあります。優美な分かりやすい「優しさ」ではなく、「やさしさ」がそこにはあります。これは感覚の問題なのでぜひ聞いてみてほしいです。

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〈16〉Consolers of the Lonely(2008)- The Raconteurs

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https://www.amazon.co.jp/CONSOLERS-LONELY-RACONTEURS/dp/B0015KO52S より画像引用

1. Consolers of the Lonely(3:25)

2. Salute Your Solution(3:00)

3. You Don't Understand Me(4:54)

4. Old Enough(3:57)

5. The Switch and the Spur(4:26)

6. Hold Up(3:26)

7. Top Yourself(4:26)

8. Many Shades of Black(4:25)

9. Five on the Five(3:32)

10. Attention(3:41)

11. Pull This Blanket Off(1:59)

12. Rich Kid Blues(4:34)

13. These Stones Will Shout(3:53)

14. Carolina Drama(5:55)

※赤字はおすすめ曲

いよいよ最後です。最後はアメリカのロックバンド、The Raconteursです。The Raconteursは元The White Stripesのジャック・ホワイトが中心となったバンドで、彼の言葉を借りれば「旧友たちとの、新しいバンド」です。The White Stripesはミニマルな構成でローファイな点が大きな特徴ですが、The Raconteursはむしろ逆で、大規模な構成でややハイファイよりです。それでも、古き良きブルースの香りが漂っている点は素晴らしい。ジャック・ホワイトの作曲能力に懐疑的な人たちが一部いましたが、このバンドにより、ジャック・ホワイトが特定の方法論に縛られた存在ではないということが証明されましたね。

The Raconteursの特徴はいろいろなメンバーが一曲の中で歌い継いでいく点ですかね。また、The Raconteursにはキーボードメンバーもおり、それ以外にもバイオリンを使うなど、様々なギター系以外の楽器を使っている点もリバイバルの中では特徴的です。4曲目の"Old Enough"とかその特徴がよく表れています。曲の展開もプログレかと思うくらい予想できない曲もあります。5曲目の"The Switch and the Spur"はまさにそういった曲ですね。これらの特徴にもかかわらず、ブルース色を失っていないのは驚きですね。発展性を持った古き良きブルース、それがThe Raconteursの魅力です。

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以上、16枚のガレージロック・リバイバル、ポストパンク・リバイバルの名盤でした。まとめると以下の11枚が、一般的にリバイバルバンドといわれるアーティストの作品の中で、私が名盤と思うアルバムです。

 

〈1〉Is This It(2001)- The Strokes

〈2〉Elephant(2003)- The White Stripes

〈3〉De Stijl(2000)- The White Stripes

〈4〉Whatever People Say I Am, That's What I'm Not(2006)- Arctic Monkeys

〈5〉AM(2013)- Arctic Monkeys

〈6〉Franz Ferdinand(2004)- Franz Ferdinand

〈7〉Up the Bracket(2002)- The Libertines

〈8〉Highly Evolved(2002)- The Vines

〈9〉Veni Vidi Vicious(2000)- The Hives

〈10〉Tyrannosaurus Hives(2004)- The Hives

〈11〉Bring 'Em In(2002)- Mando Diao

 

そして以下が、一般的にはリバイバルとはくくられないものの、リバイバルと考えてよさそうだと私が考えた名盤です。

 

〈12〉Leave Me Alone(2016)- HINDS

〈13〉Songs of Innocence & Experience(2019)- DYGL

〈14〉50回転ズのギャー‼(2006)- ザ50回転ズ

〈15〉Faust C.D.(2008)- 毛皮のマリーズ

〈16〉Consolers of the Lonely(2008)- The Raconteurs

 

以上です。ぜひ聴いてみて、シンプルでカッコよいリバイバルの世界を体感してみてください。今はやっているインディーロックやEDMとは違ったよさを体感できると思います!

またいろいろな紹介記事や考察記事を書いていきたいと思っているので、ご支援のほどよろしくお願い致します!

それでは

Black Sabbath(ブラックサバス) 紹介&好きなアルバムランキング

 どーも。文系大学院生のandrewjacovsです。今日は初めて音楽について書いていきたいと思います。

私はロックがとても好きなのですが、好きになったのは大学に入ってからです。高校生までは洋楽といえばMichael JacksonQueenしか聴いてませんでした。Queenは親の影響で、Michael Jacksonは学生時代に死去したことからきっかけを持ち聴きだしたわけっす。

大学に入って軽音サークルに入って自分の無知を恥じ、いろんな音楽を聞こうと決めました。いろいろ聴いてく中で、3大ハードロックバンドを知ったわけですね。

3大ハードロックバンドとは、ハードロック黎明期に活躍したイギリスの3つのバンドのことですね。3大ハードロックという名前は勝手に日本人が名づけたものです。

具体的には

Led Zeppelin(1968~1980)

Deep purple(1968~1976, 1984~)

Black Sabbath(1968~2017)

の三つのバンドですね。

日本だとツェッペリンとパープルがやはり有名で、ブラックサバスの知名度は低いですね。本国イギリスでの評価としてはLed ZeppelinBlack Sabbath>Deep Purpleという感じのようですね。パープルは元々アメリカと日本で爆売れして逆輸入されたタイプのアーティストですし。

とりあえずこの三つを基礎として聴こうと思い、順番に聞きました。最初はパープルしか理解できなかったですね。ブラックサバスは一番評価が高い"Paranoid"(1970)を聞いたのですが、ほんとにわからなかった。なんかドロドロしてんなーって感じでしたね。

その後ツェッペリンを何度も聞き返して、めちゃくちゃ好きになったのですが、ブラックサバスは2年くらい放置してましたね。で、2年たった後に聴きなおしたら、これがめちゃくちゃいいんですよ。なんでそう感じるようになったのか、考えられる理由最後に書いていこうと思います。

Black Sabbath メンバー】

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https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%82%B5%E3%83%90%E3%82%B9 より引用

写真左から紹介していきます!

Ozzy Osbourne(Vo.)

1948年生まれ。1977年で一度脱退。その後はソロ活動を続ける。その後何度か復帰を経て現在でもソロで活動中。独特な黄色い声が特徴的。すぐれたヴォーカリストであるだけでなく優れたパフォーマーでもある。

Tony Iommi(Gt.)

1948年生まれ。ブラックサバスの心臓。初期はブルースを独特に解釈することに長けたギタリストだったが、中期以降は独自路線を歩みだし、ヘヴィなリフを特徴とするようになる。アイオミのヘヴィなリフはメタルの先駆けとなっている。また、1980年代にはハードコア勢、1990年代にはグランジ勢により再評価された存在でもある。

Geezer Butler(Ba.)

1949生まれ。独特な湿度の高い音を出すベーシスト。アイオミがヘヴィで思いリフことが多いので、出せる音域は非常に限られているが、アタックの強い音で存在感を出していることに加え、中音域も使う。ハードロック系のベーシストのあこがれの存在では?

Bill Ward(Dr.)

1948年生まれ。非常に力の強いドラマーで、特にスネアの音の跳ね方は異常。スタジオでは手元のタムで演奏しているところをライブでは、キックを用いて演奏することがあり、そのバージョンが非常にかっこいい上に正確さも兼ね備えている。

 

7枚目で一度ヴォーカルのオジーが脱退し、8枚目の途中で戻ってくるものの、8枚目の後ふたたび脱退。その後はいろんな人がヴォーカルを務めることになります。それ以外にもちょくちょくメンバーチェンジしてます。ここから先は初期六枚をランク付けしていきます。

 

【初期アルバム六枚ランク付け】

〈1位〉Master of Reality(1971)

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https://www.amazon.co.jp/Masters-Reality-Black-Sabbath/dp/B000 より画像引用

1. Sweet Leaf(5:05)

2. After Forever(5:26)

3. Embryo(0:28)

4. Children of the Grave(5:17)

5. Orchild(1:31)

6. Lord of This World(5:25)

7. Solitude(5:02)

8. Into the Void(6:10)

※赤字はおすすめ曲

ブラックサバスの3枚目のアルバム。初期二枚はブルース色が比較的強いアルバムですが、この3枚目からメタルの方向性に一歩踏み出しています。でも、メタルじゃない。メタルに行くほどテク重視、ノリ重視じゃない。このアルバムには確実にメッセージ性があるように思います。"Master of Reality"とは、「実在の達人」とでもいうべき意味です。要するに、我々の生き方、実在の在り方を表示するようになっています。我々の人生をしっかり理解するには、我々の正の負の側面を明確に受け止めなければなりません。このアルバムの曲は正の負の側面を表しています。"Sweet Leaf"で薬物について歌い、"After Forever"で我々がよりどころにする死後の世界と永遠性について歌い、"Childern of the Grave"で今生きている子供たちは墓場に住んでいる同然であると歌い、そして結局すべては無駄なのだと"Into the Void"で締めくくります。素晴らしい!アルバム全体の流れを一番意識しているのもこのアルバムだと思います。見て分かるように5分ほどの曲が続く中に、非常に短い曲が挟まることでテンポが作られています。しかも、これらの短い曲が非常に練られていて、アルバムの世界観を構成する大きなピースになっています。あたかも廃墟の城に住む世捨て人を意識して作ったかのようなアルバムです。

このアルバムからギターのアイオミはドロップチューニングを使うようになり、ヘヴィイなリフを引くようになります。そしてこのアルバム以降、サバスはこの路線を進め、メタルへと接近していくようになります。ブルースとメタルの間、まさにハードロックとしてのオリジナリティが最もあるアルバムだと思います。また、90年代にグランジ勢により最も評価されたアルバムです。ヘヴィで重厚だけどメタルじゃない、という点はグランジに通じる面があります。

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〈2位〉Paranoid(1970)         

 

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https://www.discogs.com/ja/Black-Sabbath-Paranoid/release/696772 より画像引用

1. War Pigs(7:54)

2. Paranoid(2:49)

3. Planet Caravan(4:29)

4. Iron Man(5:54)

5. Electric Funeral(4:49)

6. Hand of Doom(7:08)

7. Rat Salad(2:29)

8. Fairies Wear Boots(6:13)

 ※赤字はおすすめ曲

 2枚目のアルバム。おそらく、一般的には最も評価の高いアルバム。一枚目の路線をさらに進歩させ、ブルース臭を残しつつも、ハードロックを確立することに成功したアルバム。ブルース由来のハードロックの音をアイオミのギターから聞くことができるのはおそらくこのアルバムが最初で最後だと思う。1枚目に比べて比較的ポップな曲が多いように思る。1~4曲目の流れは完璧。1枚目で確立した黒魔術的な世界観を受け継ぎながらも、ポップさを獲得しているのが素晴らしい。

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〈3位〉 Vol.4(1972)

 

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https://www.amazon.co.jp/Black-Sabbath-4/dp/B00022TPTI より画像引用

1. Wheels of Confusion / The Straightener(7:48)

2. Tomorrow's Dream(3:09)

3. Changes(4:42)

4. FX(1:38)

5. Supernaut(4:31)

6. Snowblind(5:26)

7. Cornucopia(3:52)

8. Languna Sunrise(2:50)

9. St. Vitus Dance(2:28)

10. Under the Sun / Every Day Comes and Goes(5:50)

※赤字はおすすめ曲

4枚目のアルバム。3枚目で見せたヘヴィな路線をおし進めた感じのアルバム。また、このアルバムからメロトロンを導入し、シンセサイザー的な音も入るようになる。そのためか、前作に比べて軽快な曲が多く、アップテンポで楽しめる曲も多い。個人的にはそんななかで3曲目の"Changes"を評価したい。この曲でのオジ―の歌唱は今までの彼の歌唱と全く異なる。上質なジャズ・ヴォーカルのような側面を見せている。また、6曲目の"Snowblind"は前作の"Sweet Leaf"と同じく薬物についての歌である。薬物の破壊性と快楽を非常にうまく表現した楽曲だと思う。

全体的に勢いがあるアルバムだが、後半は正直記憶がない。そのあたりが上位2枚との差のように思える。

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〈4位〉Black Sabbath(1970)

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https://www.amazon.co.jp/Black-Sabbath-Reis/dp/B00022TPSO より画像引用

1. Black Sabbath(6:18)

2. The Wizard(4:22)

3. Behind the Wall of Sleep(3:38)

4. N.I.B.(6:04)

5. Evil Woman(3:22)

6. Sleeping Village(3:46)

7. Warning(10:27)

8. Wicked World(4:42)

※赤字はおすすめ曲

記念すべき1枚目のアルバム。自主制作版だが、1枚目とは思えないほど世界観が出来上がっており、非常に練ってアルバムを作ったことがうかがえる。特に1曲目の"Black Sabbath"はブラックサバスとはこういうバンドですよ、という自己紹介にうってつけの曲であり、アルバムだけでなくバンドの方向性を示した驚異的な楽曲だと思う。他のアルバムに比べ圧倒的にブルース色が強く、当時の他のハードロックバンドと非常に近いものを感じ、まだオリジナリティが世界観で終わっていて、楽曲にまで反映されていないように思う。加えて、1曲1曲が違う方向を向いており、散らかったアルバムになっていることは否めない。しかしながら、ツェッペリンの1枚目と同様に、その散らばりを楽しむことができる。また、ブルースとしてのブラックサバスを楽しめるのはこのアルバムが最初で最後。2曲目の"The Wizzard"は、ハーモニカを使ったブルース色の強い楽曲で、2枚目以降では絶対に堪能できない曲である。4曲目の"N.I.B."はギーザ―の湿度の高いベース音を楽しむことができ、3枚目のベースの音をすでに先取りしたかのような曲である。7曲目に"Warning"という長尺の曲があるのも当時としては面白い。

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〈5位〉Sabotage(1975)

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https://www.amazon.co.jp/Sabotage-inch-Analog-Black-Sabbath/dp/B00WTN より画像引用

1. Hole in the Sky(3:59)

2. Don't Start(0:49)

3. Symptom of the Universe(6:30)

4. Megalomania(9:42)

5. The Thrill of It All(5:55)

6. Supertzar(3:43)

7. Am I Go Insane ?(4:13)

8. The Writ (8:44)

※赤字はおすすめ曲

6枚目のアルバム。7枚目と並んで駄作として有名。この2枚がブラックサバスの凋落を表しているという人も多分いると思う。多分理由としては手詰まり感が否めない点と、アイオミのギターの音があまりよくないことが原因だと思う。4枚目でメロトロンを使いだしてから、やはりサバスの持っていたダークでヘヴィな雰囲気は減っていき、それ以上の新しいサバスを象徴する「何か」を作り出すことはできなかった。4枚目は目新しさと曲の質で乗り切ったが、それ以降は下降線。でも、このアルバムは評価する点も多くある。手詰まりだからだと思うが新しいことにおもいきって挑戦しているように思える。このアルバムはハードロックというよりもむしろプログレハードに近い。70年代終わりから80年代にかけてのアメリカンプログレハードを先取りしているような楽曲が多い。その意味で、先見の明はあったと思うし、もっと評価されてよいアルバムかと。3曲目の"Symptom of the Universe"と4曲目の"Megalomania"が特にそう。気持ちとしてはRushやStyxとかを聴くときのテンションで聴くとよいと思う。結構ボロカスに言ってしまった点もあるが、私はこのアルバムは大好きだし(というか、もともと好きなブラックサバスを格付けしているわけなので、下位でもどれも好きである)、駄作として片づけてしまうのはもったいないと思う。

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〈6位〉Sabbath Bloody Sabbath(1973)

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https://www.amazon.co.jp/Sabbath-Bloody-12-inch-Analog/dp/B002JIEYKI より画像引用

1. Sabbath Bloody Sabbath(5:46)

2. A National Acrobat(6:15)

3. Fluff(4:09)

4. Sabbra Cadabra(5:57)

5. Killing Yourself to Live(5:42)

6. Who Are You ?(4:11)

7. Looking for Today(5:01)

8. Spiral Architect(5:27)

※赤字はおすすめ曲

5枚目のアルバム。4枚目のメロトロン導入後の路線を進めたアルバム。1曲目の"Sabbath Bloody Sabbath"は最高。オジ―のハイトーン・ヴォイスが上手くいかされた名曲。ただ、全体を通してはちょっと似た曲が多いかなという印象。全部同じ味がするって感じで、そういう点がメタルのアルバムと似た雰囲気を持つ。後、正直このアルバムからギャグっぽさが正直あるかな。4曲目とかふざけた曲名だし。あと、メロトロンがかなり主体になっててアイオミのギタープレイが他のアルバムと比べて面白くない。6枚目のところでアイオミのギターの音が悪いといったが、このアルバムはプレイが型にはまりすぎてる気がする。

そもそもこのアルバムを作るときに非常に大きなスランプに陥り、イギリスの古い城に宿る「力」を借りて創造性を呼び戻した、とかいう逸話があるほど、産むのが苦しかったアルバム。スランプを感じさせていない点はさすがだし、こういった逸話も込みだと楽しく聴けるが、全体としてはやや物足りない。

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これでランク付け&レビューは終わりです!まとめると以下の通りです!

 

1位 Master of Reality(1971)

2位 Paranoid(1970)

3位 Vol.4(1972)

4位 Black Sabbath(1970)

5位 Sabotage(1975)

6位 Sabbath Bloody Sabbath(1973)

 

【終わりに:ブラックサバスが好きになった理由】

最後に、なぜ全然わからなかったブラックサバスをいいと思えるようになったのか、考えられる理由を書きます。それはおそらく、ブラックサバスが影響を与えた音楽、ブラックサバスが影響を受けた音楽、この二つを聴いたからだと思います。最初のサバスを聴いたときはホントに何も知らない状態でしたが、その後いろいろ聴きました。特に大きかったのはグランジとブルースですね。グランジは「ブラックサバスが影響を与えた音楽」です。ブルースは「ブラックサバスが影響を受けた音楽」です。グランジとブルースを聴いたうえで、ブラックサバスを聴くと彼らの革新性と先見性に気づくことができると思います。彼らは枠にくくられない特異なアーティストだと今では感じます。ブルースに影響を受けながらも、ハードロックをそこから獲得し、そこにとどまらずメタルとグランジの萌芽となっています。彼らの特異性を知覚できるだけの音楽体験が私には欠けていました。ジャンルの「間」としてぜひ彼らを感じてみてください。ブルースが好きな人は1枚目、グランジが好きな人は3枚目、ハードロックが好きな人は2枚目から聞くことをお勧めします。

最後に、かっこいいライブの映像を貼っておきますね。

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それではまた!

【映画「エレファント(Elephant)」(2003)考察】 優れた不快感

どうも。文系大学院生のandrewjacovsです。今日からブログを始めました。映画や音楽、政治、歴史についてなどゆるく語っていくつもりです。

 
記念すべき1回目として、映画「エレファント(Elephant」(2003)について論じたいと思う。
第56回カンヌ国際映画祭パルム・ドールと監督賞を受賞しました。アメリカの高校での銃乱射事件を様々な人物の視点から描いた映画です。モデルとなっているのは1999年に起きたコロンバイン高校銃乱射事件だそうです。
 

filmarks.com             こちらの映画です!☝

 

正直言って私はこの映画があまり好きではない。パルム・ドールを受賞したということもありとても期待値が高かったのもあり、観終わった時の感想も「なんだ、こんなものか」というものである。多くの観客が評価する点は、様々な立場からの視点を重層的に組み合わせて一つの物語を表している点であるが、この手法自体も特段目新しいわけではない。
しかしながら、私が抱いた感想が「つまらない」ではなく、「好きではない」というものだった点が非常に面白いことなのではないか、と最近思えてきた。基本的に世の中につまらない映画はたくさんあるが、「好きではない」という評価を映画に下すことは少ない。映画の「好き嫌い」を判断するためには、その映画に対して能動的に理解しようとしなければいけないからである。基本的に「つまらない」映画は観る気を失せさせるので、能動的な視聴を不可能にする。そのため「嫌い」という評価にたどり着くことさえできない。
 
考えてもみて欲しい。銃乱射事件という凄惨な事件を映した映画に対して「好き」という感情を抱くことはおかしいことである。つまり、銃乱射事件の真実を本当に伝えたいのなら、観客に「好き」という感想を抱かせた事件で敗北である。銃乱射事件に対して抱く感想と映画について抱く感想が真逆になるということは、あくまで映画が虚構であることを観客に自覚せしめるような出来に映画がなってしまっているからである。
 
「エレファント」が突きつけるのは徹底的な不快感である。そこにある全てが不快である。そこには虚構に満ちたヒロイズムもなければ、銃乱射に至る必然的な理由は描かれない。どこにでもいる高校生が、銃乱射の犯人となりうることをこの映画は示しており、銃乱射の犯人が特異な存在ではないということが気づかされる。
 
我々は銃乱射事件が起きると、恐れを抱く。それ自体は当然なことだ。その結果我々は自分とは切り離された存在として犯人たちを理解しようとする。我々は隣に普通に座っている人物が急に銃乱射に及ぶかもしれないことを恐れているのである。さらに言えば、自分自身が銃乱射に及ぶことすら、恐れているのかもしれない。その結果我々は犯人たちを客観的なものとして対象化しようとする。銃乱射に及ぶ人物にはいかれたわけがあるのだ、奴らが俺たちとは異なる存在になってしまったのには、何か根源的な理由はあるはずだ、と考えるわけである。マイケル・ムーアはまさにこのことに気づいていた。彼は「ボウリング・フォー・コロンバイン」で、銃乱射事件の与えられた理由付けはどれもくだらないもので、それらの理由は、ボウリングをしていたから銃乱射をしたのだ、という非常に馬鹿げた理由と同じくらいの説得力しか持たないものだと立証した。彼は銃社会の問題点にそこから目を向けた。銃乱射を行った犯人がおかしいのではなく、銃乱射事件を可能にしてしまっている状況に目を向けたのである。「ボウリング・フォー・コロンバイン」はドキュメンタリー映画なのだから現実を描写し、物事の根源を理解することが肝要であるからして、これは当然の流れである。しかしながら「エレファント」はドキュメンタリーではないので、より自由である。「エレファント」は「ボウリング・フォー・コロンバイン」の一歩手前で立ち止まることで、より強烈な印象を観客に植え付ける。だからこそ私はこの映画を二度と見たくないと思うわけであるし「嫌い」というはっきりした感情を持つことが出来る。
 
加えて「エレファント」が優れているのは、映画が観客に不快感を植え付けるだけではなく、観客がこの映画を見ている自分に不快感を覚えるような仕掛けがなされているからである。それはこの映画の持つ時間性ともかかわっている。ここでは長くなるので、また今度。

 

filmarks.com   「ボウリング・フォー・コロンバイン」はこれです!☝