Dinosaur. Jr(ダイナソーJr) 紹介&好きなアルバムランキング

どうも、文系大学院生のandrewjacovsです。前回は政治の記事でしたが、今回はふたたび音楽の話題に戻ろうと思います。今回はDinosaur. Jrの紹介と好きなアルバムランキングをやります。

Dinosaur. Jrは80年代後半から90年代後半にかけて活躍したオルタナグランジバンドです。ポスト・ハードコアの終焉期からオルタナ黎明期に活躍をしたバンドの一つです。Dinosaur. Jrは様々なポスト・ハードコアのバンドから影響を受けており、特にBlack FlagとHüsker Düからは強い影響を受けています。影響を与えたバンドとしてはSonic YouthNirvanaといった、オルタナ初期のバンドが上がります。1997年に一度解散しますが、2007年に復活し、以後創作やライブなど精力的に活動を行っています。以下、Dinosaur. Jrのメンバー紹介です。

【Dinosaur. Jrメンバー】

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https://rockinon.com/news/detail/73680 より画像引用

写真左より紹介していきます!

J. Mascis(Joseph Donald Mascis)(Vo, Gt.)

けだるい声が特徴的なギターヴォーカル。他のグランジバンドと比べ叫ぶ機会は圧倒的に少なく、高い声を出すこともあまりない。たまに裏声を使って高い声を出しているが、かなり厳しいようでカスカスの小さな声。だがそれがよい。ギタープレイは非常に独特なスタイルを持っており、ヴォーカリストとしてよりもはるかに評価されている(それはRolling Stone誌が選ぶベスト・ギタリストTOP100にランクインしていることからもわかる)。ビッグマフを利かせてジャズマスをひずませまくる。他オルタナアーティストと同様、それほど複雑なギタープレイをするわけではないが、ギターソロのときは別人のように切れのある速弾きを見せることもある。難しいことができないギタリスト、というよりも難しさ以外の点に非常に価値を置いているギタリストに思える。

Lou Barlow(Ba,Vo.)

ノリを意識したベースプレイが特徴的なベーシスト。非常にうまい。ベースコードを弾くことも多く、中音域を沢山使うため存在感はかなり大きい。また、Jと共に歌うこともあり、歌も非常にうまくコーラスも得意。かなり激しい弾き方をするがリズムのずれはなく、曲に疾走感を持たせるプレイが特徴的。3rdアルバム後脱退し、Sebadohを結成しギターヴォーカルを務める。SebadohはPavementと並び90年代ローファインディーの雄となった。2007年の再結成時にDinosaur. Jrに復帰。

Murph(Dr.)

特徴があるわけではないが安定感のあるドラマー。JとLouが自由にそれぞれのギタープレイとベースプレイを実行することを可能にしているのはMurphの安定したドラミングだと思う。5thアルバム後脱退し、一時はLemonheadsに参加。2007年の再結成時にDinosaur. Jrに復帰。

 

【音楽的特徴】 

Dinosaur. Jrは他のグランジオルタナアーティスト同様ひずんだギターと単純なギタープレイが特徴的であるが、他のグランジオルタナアーティストとは異なる特徴を持っている。まず一つ目は、使っているコード。Dinosaur. Jrの曲で使われているコードはフォークのコードであることが多かったりする。そのため、アコースティックギターで弾いても全く違和感のないメロディーを持っている。そのためSoundgardenAlice in Chainsのようなメタル感は非常に薄い。ひずみだけではなくメロディーでも勝負できる点は素晴らしい点であり、この時期のグランジオルタナ勢の中ではかなりポップなのが特徴的である。どちらかというとパワーポップに近い感じさえ受ける。しかしながら、パワーポップの持つ明るさのようなものがDinosaur. Jrにあるかといえばそれも違う。ポップさはあるが暗い。内省的であるが美しい。それがDinosaur. Jrの持つ魅力である。彼らが奏でる音は80年代後半のポスト・ハードコア的な音である。Hüsker Düのようなある種破壊的な音である。しかしその中にポップセンスがあるという意味で、他のポスト・ハードコアバンドとも異なるのである。

二つ目はヴォーカルのJの歌い方であろう。何というか、Jの歌い方には気力がない。気合が入っていないとでもいうべきだろうか。カート・コバーンのような絶叫を聴くことはできない。グランジアーティストやポスト・ハードコア勢の多くが持つのはむき出しの怒りであり、叫びである。しかしながら、Dinosaur. JrのJのヴォーカルではそういったむき出しの感情を感じることはほとんどない。むしろ、そこにあるのは諦めの感情にも聴こえる。生の疲れといってもよいかもしれない。それをポップなメロディーに乗せて歌うという行為は我々の生活そのものなのかもしれないとすら思えてくる。いくらあきらめて、歩を止めたいと思っても、後ろ向きに生きていくことは許されない。

 

【好きなアルバムランキング】

ここからは好きなアルバムランキングである。Dinosaur. Jrの作品は以下の三つの時期に分けることができる。

①インディー期

1st~3rdまで。インディーズ時代の音源群である。この時期はややポスト・ハードコア的な要素が強く、曲も2,3分台の短いものが多い。

②メジャー期

4th~7thまで。メジャー移籍後の音源群である。オルタナグランジ的要素が増し、長尺の曲も増えた。ポップセンスはやや後退し、歌詞も内省的なものが増えた。Jが積極的に裏声を用いるようになったのもこの時期。

③再結成期

8th~11thまで。再結成後の音源群である。ポップさが一気に増し、明るい楽曲が増えた。ややパワーポップ感が別時期に比べ強いように思える。

ここでは、①と②の時期の全7作品をランキングします!

〈1位〉Bug(1988)

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https://www.discogs.com/ja/Dinosaur-Jr-Bug/release/674285 より引用

1. Freak Scene(3:37)

2. No Bones(3:43)

3. They Always come(4:37)

4. Yeah We Know(5:24)

5. Let It Ride(3:37)

6. Pond Song(2:54)

7. Budge(2:33)

8. The Post(3:38)

9. Don't(5:42)

10. Keep the Glove(2:51)

※赤字はおすすめ曲

3rdアルバム。つまり、インディー期最後のアルバムです。このアルバムを持ってLouが脱退します。1st、2nd同様ポスト・ハードコア由来のひずみを持った音を保ちつつ、ポップセンスを洗練させた作品。非常に聴きやすい曲が多く、初めてDinosaur. Jrを聴く人にも勧められる一作。駄曲がなく、10曲ツルッと聞ける点もよい。特に1曲目の"Freak Scene"はさわやかさの中にひずみと内観的手法が見え隠れする超名曲。また、9曲目の"Don't"はレコーディング中に予定よりも1曲足りないことに気づき、一発録りでその場で適当に録った曲らしい。この曲は「叫び」を前面に押し出した曲であり、かなりハードコア感の強い楽曲。10曲目の"Keep the Glove"はカントリー調の曲で彼らなりのギャグなのだと思う。どのアルバムも好きで非常に順位付けが難しかったですが、ポスト・ハードコア的な音とポップなメロディーという二大特徴のバランスが最も良い作品に聴こえたので、一位にしました。

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〈2位〉You're Living All Over Me(1987)

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https://www.amazon.co.jp/Youre-Living-All-Over-Analog/dp/B005FQNISA より画像引用

1. Little Fury Things(3:07)

2. Kracked(2:51)

3. Sludgefeast(5:17)

4. The Lung(3:51)

5. Raisans(3:50)

6. Tarpit(4:36)

7. In a Jar(3:28)

8. Lose(3:11)

9. Poledo(5:43)

10. Just Like Heaven(2:53)

※赤字はおすすめ曲

2ndアルバム。3rdアルバムの"Bug"を紹介したが、"Bug"に比べてこの作品の方がよりポスト・ハードコア感が強く、ノイズもひずみも大きい。メロディーがポップではない曲も多く、80年代感がかなり強いアルバム。最初このアルバムから私は聴きましたが、まったくわからなかった。というよりアクが強すぎて苦手だった。ただ他のアルバムを聴いた後に本作を聴くと、これが一番Dinosaur. Jrらしいアルバムなのでは、と思えてくる作品。若干シューゲイザー感もあるかも。1曲目の"Little Fury Things"は本当に素晴らしい楽曲で、80年代の音楽のすべてを3分間に詰め込んだような印象さえ受ける。ハードコア的な叫び、ポスト・ハードコア的なノイズとシューゲイザー的なノイズ、フォーク調のメロディ、オルタナ的歌唱。全ての人に聴いてほしい名曲である。4曲目の"The Lung"は疾走感が光る名曲。そして10曲目の"Just Like Heaven"はポストパンクの雄、The Cureのカヴァー。再解釈が非常にうまくできており、メロディーを殺さずにオルタナ感を強めることに成功している。The CureのRobert Smithもこのカヴァーをとても気に入っていたらしい。

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〈3位〉Where You Been(1993)

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https://www.amazon.co.jp/Where-You-Been-Dinosaur-Jr/dp/B000002MH5 より画像引用

1. Out There(5:54)

2. Start Choppin'(5:40)

3. What Else Is New?(5:10)

4. On the Way(3:30)

5. Not the Same(6:02)

6. Get Me(5:52)

7. Drawerings(4:51)

8. Hide(4:14)

9. Goin' Home(4:19)

10. I Ain't Savin'(2:30)

※赤字はおすすめ曲

5thアルバム。メジャー移籍後2作品目。このアルバム後にMurphが脱退し、Dinosaur. Jrは実質的にJのソロ活動になります。今までの作品との違いは切迫感かと。非常に切迫感があり、狭くて暗い部屋に閉じ込められたかのような楽曲が連続します。また、Jが積極的に裏声を用いるようになったのはこの作品からだと思います。ギターソロも増え、いわゆる「泣き」のギターを沢山聞かせてくれるのも新たな魅力です。この「泣き」のギターの路線を活動を停止する前にこのあと二作品にわたり追求する、という感じですね。1曲目の"Out There"は「泣き」のギターと切迫感が際立つ名曲。この曲のイントロだけでもこのアルバムは買う価値があると思いますね。このアルバム以降の三作品は非常に内省的で、グランジオルタナ感が強い。結構暗いアルバムであるうえに、キラーチューンが他のアルバムと比べて少ない気がする。おすすめ曲はどれも最高なんだけど、それ以外の曲の印象がやや薄い。それでも、転換点となった価値のあるアルバムだと思います。Dinosaur. Jrのアイコンともいえるキモカワジャケットのうちの一つでもあります。いいね。

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〈4位〉Without a Sound(1994)

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https://www.amazon.co.jp/Without-Sound-Dinosaur-Jr/dp/B000002MTC より画像引用

1. Feel the Pain(4:20)

2. I Don't Think So(3:37)

3. Yeah, Right(2:47)

4. Outta Hand(5:00)

5. Grab It(3:33)

6. Even You(3:23)

7. Mind Glow(4:04)

8. Get Out of Thins(5:23)

9. On the Brink(3:14)

10. Seemed Like the Things to Do(5:49)

11. Over Your Shoulder(4:53)

※赤字はおすすめ曲

6thアルバム。メジャー移籍後3作品目。前述の通り、前作制作後にドラムのMurphが脱退。そのため、このアルバムは実質J一人で作ったものです。1994年というグランジ黄金期に制作したこともあり、たしか売り上げ的には最も売れたアルバム。一人になったJの悲しさ、哀愁があふれ出るアルバム。インディーズ時代とは異なり、ポップさというより「泣き」のギターというべきギタープレイを見せている。ひずみとノイズはやや減退し、ソフトなオルタナ的な楽曲が多い。バラードに良い曲が多い。それでも1曲目の"Feel the Pain"や2曲目の"I Don't Think So"といった、今までのDinosaur. Jrらしい楽曲も含まれている。質は高いアルバムではあるが、後半は似た楽曲が多く、正直飽きる側面もなくはない。それでも、「悲しみ」が最も現れた力作だと思う。このキモカワジャケットもいいですね。

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〈5位〉Hand It Over(1997)

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https://www.amazon.co.jp/Hand-Over-Dinosaur-Jr/dp/B000024GGC より画像引用

1. I Don't Think(3:23)

2. Never Bought It(3:43)

3. Nothin's Goin On(3:14)

4. I'm Insane(3:53)

5. Can't We Move This(3:42)

6. Alone(8:02)

7. Sure Not Over You(4:10)

8. Loaded(3:27)

9. Mick(4:39)

10. I Know Yer Insane(3:04)

11. Gettin Rough(2:13)

12. Gotta Know(4:48)

※赤字はおすすめ曲

7thアルバム。このアルバム後、Dinosaur. JrはJの判断でいったん活動を停止します。1997年という、グランジ・ムーブメントの終焉期に出されたことも災いし、評価はあまり得ることができず、セールス的にもイマイチだったようです。ただ、J本人はとても気にいっているようで、実際いい作品だと私も思います。ギタリストとしてのJはこの時が全盛期だと思いますね。非常に指もよく動くし、メロディーもよい。何かがのりうつったかのような「泣き」のギタープレイは健在です。あとは、裏声の使用頻度がものすごく増えた点が大きな特徴ですかね。ここは好みがわかれると思います。私としては嫌いではないですが元のけだるい感じの方が好きですね。ギターやベース、ドラム以外の楽器を沢山使っている点も特徴で、Jの作曲能力の高さを示したアルバムだとも思います。この路線の作品もっと聴きたかったなあ、と思わせてくれるアルバムです。ただ、"I'm Insane"や"Gettin Rough"といった曲名から察するに、メンタル限界だったんでしょうね。こちらのキモカワジャケットも愛おしい。

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〈6位〉Green Mind(1991)

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https://www.amazon.co.jp/Green-Mind-Dinosaur-Jr/dp/B000002LO1 より画像引用

1. The Wagon(4:55)

2. Puke and Cry(4:28)

3. Blowing It(2:45)

4. I Live for That Look(1:56)

5. Flying Cloud(2:35)

6. How'd You Pin That One On Me(4:24)

7. Water(5:38)

8. Muck(4:16)

9. Thumb(5:39)

10. Green Mind(4:57)

※赤字はおすすめ曲

メジャー1作目の4thアルバム。パール・ジャムの1st、Nirvanaの2ndが発売されたのもこの年であり、グランジオルタナムーブメントの始まりにDinosaur. Jrもメジャーデビューをした、というわけです。世間一般からは最も評価が高いアルバムで、はじめてDinosaur. Jrを聴く人にお勧め。全体的にノイズやひずみは控えめで、異常なほどさわやかな楽曲が続く。夏にドライブしながら聞くアルバムって感じ。決して質は低くはないのだが、ポスト・ハードコア感、泣きのギターといった特徴が失われてしまっており、Jのギタープレイも割と型にはまった分かりやすいものになっている。おしゃれオルタナって感じ。決して悪くはないが私がDinosaur. Jrに求めていたものとは大きく異なったアルバム。クールすぎるとジャケが話題になったらしい。たしかにクールだが、Dinosaur. Jrっぽくないといえばぽくない。キモカワジャケットの方が彼らの特徴を上手くアイコンとして提示していると思いますね。1曲目の"The Wagon"と10曲目の"Green Mind"はそんな中でもDinosaur. Jr節を利かせた良曲だと思う。

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〈7位〉Dinosaur. Jr(1985)

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https://www.amazon.co.jp/Dinosaur-Jr/dp/B0007NMKAI より画像引用


1. Bulbs of Passion(4:16)

2. Forget the Swan(5:09)

3. Cats In a Bowl(3:36)

4. The Leper(4:05)

5. Does It Float(3:19)

6. Pointless(2:47)

7. Repulsion(3:05)

8. Gargoyle(2:11)

9. Severed Lips(4:03)

10. Mountain Man(3:29)

11. Quest(4:28)

12. Does It Float (Live)(3:54)

※赤字はおすすめ曲

記念すべき1stアルバム。特徴であるノイズとひずみ、けだるい歌い方といった特徴が早くも表れているのがすごいですね。Louのベースの音も1stとは思えないほどいいです。それでも上位に入らないのは、単純に曲の質があまり高いとは思えないからです。もっと言えば、この段階で指針や挑戦したい内容はかなり定まっている印象を受けるものの、それを曲のよさに反映できていないように思える。音楽の持つ実験性に曲の質が負けている感じがしてしまうアルバムですね。それでも、聴きどころはたくさん。まず本意気でポスト・ハードコアをやっているアルバムはこれしかないという点。Sonic YouthNirvanaよりも、Black FlagFugaziに近いものを感じる。ギターのノイズという意味では一番かもしれない。彼らのルーツ、目標を知る上では一番良いアルバムということもできるかもしれません。曲の質も高くないといったが、9曲目の"Severed Lips"はその後の彼らの活躍を保証するような、これ以降のDinosaur. Jrの持つ特徴を凝縮したような一曲だと思います。2曲目の"Forget the Swan"はBlankey Jet Cityっぽいギターから幕を開け、90年代の彼らの特徴でもある切迫感を早くも感じる良曲である。

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以上で7作品のランク付け&レビュー終わりました!まとめると以下の通りですね。

 

1位 Bug(1988)

2位 You're Living All Over Me(1987)

3位 Where You Been(1993)

4位 Without a Sound(1994)

5位 Hand It Over(1997)

6位 Green Mind(1991)

7位 Dinosaur. Jr(1985)

 

はじめて聴く人には"Bug"か"Green Mind"をお勧めしておきます!

ちなみに、J本人がアルバムを気に入っている順にランク

付けしてます。以下の通り。

 

1位 You're Living All Over Me(1987)

2位 Hand It Over(1997)

3位 Where You Been(1993)

4位 Dinosaur. Jr(1985)

5位 Green Mind(1991)

6位 Without a Sound(1994)

7位 Bug(1988)

 

何でだよって感じですね。私とJは趣味が合わないみたい。1位~3位は納得できなくもないけど。ちなみに、再結成後の4作品も含めてJはランク付けしてますね。この4作品も含んだランキングは以下のリンクから見れます。

amass.jp

ではでは!ぜひ聴いてみてください!